国内の無人運転離線(AERA 2019年6月17日号より)
国内の無人運転離線(AERA 2019年6月17日号より)
ATO導入済みの主な路線(AERA 2019年6月17日号より)
ATO導入済みの主な路線(AERA 2019年6月17日号より)

 横浜市南部を走る無人運行の新交通システム「シーサイドライン」で前代未聞の逆走事故が発生した。無人運行を可能にする自動列車運転装置(ATO)への不安が高まっている。

【写真】ATO導入済みの主な路線はこちら

*  *  *

 同じく無人運転の「ニュートラム(大阪市)」では、1993年に発生したオーバーランで200人近くが重軽傷を負った。この事故では、列車を減速させるATC(自動列車制御装置)の減速指示を伝える機器の故障ということまでは判明したが、故障の原因は特定されず、完全な原因究明はできないままだ。不安を軽減するため6年以上乗務員ありで運転を続け、2000年に無人運行を再開している。

 ATOによる自動運転の歴史は40年を超える。77年開業の神戸市営地下鉄が、一般の乗客を乗せる列車では最初のATO導入例とされる(有人での運行)。

 最初に無人運転を導入したのは81年に開業したニュートラムと「ポートライナー(神戸市)」で、ともに高架上の専用路線を走る新交通システムだ。線路への侵入がなく、鉄の車輪ではなくゴムタイヤを使用しているため停止位置を遠隔で制御しやすいことが理由だった。

 現在では、全国の多くの鉄道にATOが導入されている。有人運行の路線でも、運転士は列車の発進やドアの開閉を操作するだけで、列車の減速などはATOが行う「STO(準自動運転)」が多い。

 福岡市営地下鉄の七隈線では、運転士の資格を持つ乗務員が緊急時に備えて乗車しているが、技術的には運転士無しでの運行も可能という。今後は地下鉄にも無人運行が広がっていく可能性がありそうだ。

 また、東海道新幹線では64年の開業当初から、運転士が信号を視認して速度を落とすことが難しいため、自動的に速度を抑えるATCが導入されている。現在では、ダイヤが遅延している場合には自動的にスピードを速めて遅れを回復するシステムまで備わっている。専用線を走る点も新交通と同じ(フル規格新幹線の場合)で、スピードが速いというハードルはあるものの、日本大学の綱島均教授(鉄道工学)は「新幹線では将来的な無人運転も技術的には可能」と指摘する。

次のページ