写真撮影を済ませての会見終了直前、蒼井さんは「一番大事なこと」を語った。山里さんを選んだ決め手は、仕事に対する姿勢への尊敬の念だと語った。

 基本は怠け者の自分だが、仕事になったらトコトンやってしまう。山里さんを見ているとそれが間違ってないんだと思え、勇気がわく。だから生涯を共にできると思った、と。

 山里さんが、こう引き取った。

「最高に楽しいこの世界で生きていけるよう、全力で仕事に打ち込む姿を好きと言ってくれた優さんのために、これからも頑張りたい。ご指導ご鞭撻、よろしくお願いします」

 仕事をキーワードに、互いの愛を語るラストだった。

 と、話がきれいにまとまった。だから会見から4時間ほど後に始まった「JUNK山里亮太の不毛な議論」(TBSラジオ)を聞くことにした。

 非モテでダメな山ちゃんを愛するリスナーたちが集まる空間。山里さんはボスと呼ばれ、リスナーからのメールは下ネタ満載。そんな男子校の部室みたいな世界で「いい話過ぎるいい話」を薄めようかな、と思ったのだ。

 冒頭の40分、山里さんは謝罪とお礼を語っていた。ラジオを始めた時から、人生の節目を報告することが夢だった。だから結婚を直接語る最初の場所はこの番組と思っていたが、スポーツ紙にすっぱ抜かれてしまった。それなので「スッキリ」(日本テレビ)の「天の声」で少しだけ話してしまい、本当に申し訳ない。でもリスナーのおかげで今日がある。番組のスタッフ、そして今ラジオの前にいるみんなにお礼を言いたくて、ここに座っている、と。

 笑いをはさみつつの超真面目な空間。が、その日のメールテーマを「リスナー記者からの質問大募集」と宣言してからは部室感が上がっていった。

「ボスいゆうさん」と「ボス」と「蒼井優」を足した名前で山里さんに呼びかけるメールもあった。下ネタも順調に増えていった。いつも通りの空気だったことに安心したからだろう、最後に山里さんが号泣した。

 これまでずっと人を妬む話をしていたから、自分が幸せになったら番組を聞く意味がなくなるのではないか。そう思い、結婚するのが怖くなることがあった。でもシェフをしているリスナーからある時、「ボスの不幸だけでラジオを聴いているわけではないから、好きな人ができたら飯食いに来てください」と言われた。悩む中、その声が聞こえてきて、結婚という選択ができた。本当に皆さんのおかげでいろんな夢が叶っている。そう言って号泣していた。

 そして「もっともっと精進しますんで、これからもよろしくお願いします」と締めくくった。

 ボス、やっぱり最後は仕事への決意表明じゃないですか。なんて仕事好きなんですか。見てください。アエラ読者からも、温かいメッセージがたくさん来てますよ。どうぞ、蒼井さんと、末永くお幸せに。(コラムニスト・矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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