出産祝いへのお礼として送る、サンキューカード。Eメールで済ませる場合も多いですが。(写真/筆者提供)
出産祝いへのお礼として送る、サンキューカード。Eメールで済ませる場合も多いですが。(写真/筆者提供)

 今回は「出産内祝い、なくしませんか」という話をしたいのです。

 内祝い、つまり出産祝いへのお返しのことです。日本では、産後1~2カ月の間に贈るのが“マナー”で、金額は半返し、つまりいただいた額の2分の1くらいの金額の品物をお返ししましょうといわれます。マナー本には「あまりに安い品物を贈ると失礼だし、かといって高価すぎる品物を贈るのも相手へのプレッシャーになるので注意」なーんて書かれていて、いや、でもあまりにどんぴしゃりな金額の品物をお返しするとそれはそれで嫌みじゃないか……と思考はぐるぐる輪を描き、内祝いセレクト、産後ヘロヘロの脳みそには全くもって荷が重すぎるのです。

 この内祝いという風習、アメリカにはありません。むしろ、お返しの品を贈ると失礼にあたることがあります。

 アメリカの出産祝いは子どもが産まれる前、だいたい妊婦さんが臨月の頃に行います。「ベビーシャワー」というイベント、みなさんも耳にされたことがあるのではないでしょうか。

 産後は赤ちゃんのお世話で手一杯。だから事前に赤ちゃんグッズをプレゼントすることで妊婦さんを助けましょうという趣旨があります。ベビー服や絵本、おもちゃの他、オムツやお尻ふきなど実用的な品物も贈られます。参加者と一緒にごはんを食べたりゲームをしたりして、出産前の貴重な自由時間を思いきり楽しみます。

 ベビーシャワーの起源は古く、古代ギリシャ時代にさかのぼるそうです。妊娠中、家に閉じこもっていた妊婦さんが無事出産を終えて再び外の世界に戻ったとき、「おかえりなさい」と祝宴を開いて贈り物をしたのがはじまり。出産後にお祝いするという形式は中世、ビクトリア朝も同様で、1900年代に入って出産時に命を落とす母子が減ってから現在のような産前のお祝いになったそうです。アメリカでは1929年に始まった世界恐慌の際、経済的に大変な新米パパママを応援するためベビーシャワーが広まりました。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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