幕が上がり、総勢10人のキャストと監督の蜷川実花さんが姿を見せると2000人を超える観客から歓声が沸き起こった。6月6日にジャパンプレミアが行われた映画「Diner ダイナー」(7月5日公開)。
藤原竜也さん演じる孤高のシェフ、ボンベロのもとに客として訪れるのはすべて殺し屋という、迫力のバイオレンスと蜷川さんのカラフルな色彩感覚が融合した、不思議な世界観を持つ作品だ。
「大勢の方に集まっていただき、ありがとうございます」
藤原さんは埋め尽くされた客席を前に、晴れやかな笑顔を見せた。
マイクを手にキャスト一人一人が撮影中の様子やできあがった作品を観ての率直な感想を述べる。印象的だったのは、キャストの多くがこの作品の“新しさ”について興奮気味に語ったことだ。
「新感覚の映画ができました」(窪田正孝さん)
「新しい日本映画の基準に、将来なっていくのかな、という革命的な映画をゆっくりと楽しんでください」(武田真治さん)
「観たばかりなのですが、いまだに興奮冷めやらぬ状態です」(斎藤工さん)
「なんでじじいが一人立っているんだと思われているかもしれませんが」と切り出し笑いを誘った奥田瑛二さんはこう続けた。
「とにかくワクワクしながら、自分も参加しました。新しい感覚というか、いらした方々が『日本になかった映画を観たな』と思われることを私は確信しております」
『さくらん』(2007年)、『へルタースケルター』(2012年)と、これまで女性を主人公にした作品を手掛けてきた蜷川さんは言う。
「男性主演で撮るのは初めてですし、いままでの自分が得意な題材とはちょっと違った作品だったので、それをどういうふうに挑戦に変えプラスにしていくか、というのがまず自分の課題でした。圧倒的なキャストが揃ったので、その豪華さをエンターテインメントに変えて、最後にちゃんとメッセージを残せるように心がけました。現場は、新しい殺し屋が次から次へとクランクインして、みんなやりたい放題やって帰っていくような(笑)」
蜷川さんの演出について、武田さんからこんな証言が。
「毎日違うワンピースを着られているんですよね。それで、『こんなふうに殺しちゃってー』って。不思議なお絵描きにお付き合いさせていただいているような感じでした」
奥田さんも言う。
「絵の具って普通、12色、24色あるわけですが、それではもう足りないくらい。『こんなにも色があるのか』というところに役者がポン! と放り込まれるわけです。蜷川監督を信頼して、そのワンダーランドに心地よく身を置くというか」
「楽しかったですよね」と、奥田さん、土屋アンナさんが顔を見合わせる。
ヒロインを演じた玉城ティナさんは、藤原さんに「ボンベロさんが藤原さんでよかったです」と感謝の言葉を口にしていた。
キャスト同士が尊敬の念を抱き、信頼し合っていることが伝わってくる舞台挨拶だった。
(文/ライター・古谷ゆう子)
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