メイ首相 (c)朝日新聞社
メイ首相 (c)朝日新聞社

 ブレグジットを巡り国会との対立が続いていた英国のメイ首相が退陣を表明した。「鉄の女」サッチャー氏に次ぐ女性首相。2人の間には意外な共通点があった。

*  *  *

「愛するこの国に仕える機会を得たことに感謝して職を離れる」

 5月24日、ダウニング10(英首相官邸)の前で辞意を表明したテリーザ・メイ首相(62)は演説の最後に涙ぐみ、声を震わせた。

 辞任の最大の理由は、2016年7月の就任以来、公約に掲げてきた欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)交渉の行き詰まりだ。メイ政権がEU側と結んだ合意案について、野党労働党だけでなく、与党内の強硬離脱派も造反して英議会が承認を3度も拒み、求心力が低下した末の決断だった。6月7日に与党保守党の党首を辞任し、7月中に新党首が首相になった段階で首相を退任する。

 英国で女性が首相になったのは、強硬な政治姿勢で「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー(在任1979~90年)以来。メイ氏自身、辞意表明の際に「(私は)2人目の女性首相だが、間違いなく最後の女性首相ではない」と語った。

 だが、ブレグジットをまとめられず、約3年の短命政権に終わったことで、英メディアは「植民地米国が独立した18世紀以来、最悪の首相」(ガーディアン紙)などと厳しい評価を向けている。

 メイ氏は、56年に英南部イーストボーンで生まれた。父はイングランド国教会の司祭(ビカー)。裕福な家庭の出身が多い保守党政治家の中で、中流の出身だ。中流や貧困層の優秀な子どもが学べる選抜制公立校グラマースクールからオックスフォード大に進んだ。

 オックスフォード近郊にある母校ホールトン・パーク女子グラマー校(現在は共学の普通校)では弁論部に所属し、74年の総選挙の際の模擬投票では、保守党を代表して全校生徒を前に演説した。物静かだが、強い意志を持ち、サッチャー政権の誕生前だった当時、「女性として初めての首相になる」と公言していたという。

次のページ