「聞いている分には面白いですが、自分でやるのは抵抗がある。深く考えずに合わせた方が得なような気もしますが……」
関西系商社に勤務する男性(43)は、大阪本社に異動後、関西的コミュニケーションの洗礼を浴びた。
「何か言ったらとりあえず『ウソやん』と言われるのでいぶかしく思っていましたが、疑われているわけではなく、ある種の相づちなんだと気づきました」
自分ひとりが標準語を話していても感じが悪いし、中途半端な関西弁は気持ち悪がられる。一体どうすればいいのか。
「語彙は標準語だけど、イントネーションを関西に寄せる。それが一番気持ち悪がられない」
男性の職場の朝礼では、全社員が持ち回りでスピーチをする。そこでオチのない話をすると、人格はおろか、仕事のパフォーマンスまで低いと判断されかねないという。話が弱い人はコミュニケーション能力が低いと見なされるのだ。
「オチも笑いもないのが最悪。そりゃもう朝イチからしんどい」
「笑いの英才教育」を受け、幼少期から鍛え上げられている関西人に比べ、20年近くのビハインドがある非関西人。いったい朝礼にどう臨むのか。
「やっぱり準備ですね。関西人は準備を怠ることもあるので、英才教育を受けていない僕たちはちゃんと準備をして話を構成し、無駄を省き、なんなら1回時間を計ってしゃべってみて、このくらいならコンパクトにオチまでいけるといったスティーブ・ジョブズ的な練習をする。やはりビハインドはあるから、そのくらいやって結果を出す」
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年6月10日号より抜粋