事件現場で手を合わせる人の姿が絶えず、供えられた花が山のように積み重なっていた/5月30日午後4時42分、川崎市多摩区 (c)朝日新聞社
事件現場で手を合わせる人の姿が絶えず、供えられた花が山のように積み重なっていた/5月30日午後4時42分、川崎市多摩区 (c)朝日新聞社
会見するカリタス小学校の内藤貞子校長(中央)。右は倭文覚教頭/5月28日午後6時37分、川崎市多摩区 (c)朝日新聞社
会見するカリタス小学校の内藤貞子校長(中央)。右は倭文覚教頭/5月28日午後6時37分、川崎市多摩区 (c)朝日新聞社
過去に起きた無差別殺傷・傷害事件(AERA 2019年6月10日号より)
過去に起きた無差別殺傷・傷害事件(AERA 2019年6月10日号より)

 カリタス小学校の児童らが刃物で次々に襲われ、犯人も自殺した事件。「附属池田小事件」以降進められてきた安全への取り組みは、被害を防げなかった。子どもを守る方策は。新たな発想が必要だ。

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 今回の事件を、専門家はどうみているのか。『無差別殺人の精神分析』などの著書がある精神科医の片田珠美さんは言う。

「典型的な無差別殺人であり、拡大自殺であると感じました」

「拡大自殺」とは、自殺志願者が、他人を道連れにして無理心中を図ることをいう。

「最初の犯行から十数秒後に自殺していることから、ものすごく強い自殺願望があったのだと思います」

 無差別殺傷事件は大きく二つに分かれる。秋葉原通り魔事件のように不特定多数を狙った事件と、附属池田小事件のようにある程度襲う対象を絞った事件だ。カリタス学園に通う児童を狙ったとみられる今回の事件は、「附属池田小事件にとても近い印象です」と話す。

「一緒に暮らしていたいとこがカリタスに通っていたとの報道もありました。自分の境遇への怒りや復讐願望が、カリタスの児童に向けられた可能性があります」

 立正大学教授で犯罪学が専門の小宮信夫さんは、今回の事件現場を訪れ、こう感じたという。

「これまで多くの事件現場に行きましたが、今回は手向けられた花束がとても多く、世間に与えた衝撃が大きいことを物語っています」

「登下校の安全確保について、認識を改める必要があります」

 そう話すのは、子どもを狙う犯罪から身を守る教育活動を行っているNPO法人体験型安全教育支援機構代表理事の清永奈穂さんだ。

 文部科学省は昨年6月、その前月に新潟市で下校途中の児童(7)が殺害された事件を受けて、「登下校防犯プラン」をまとめた。その中で、安全確保策として集団登下校やスクールバスの活用を挙げた。

 だが、今回のようにバス停で襲われたり、過去には停車中のバスの中に乗り込んだ犯人に襲われたりしたケースもある。清永さんは言う。

「各地域では、これまで『児童生徒を極力一人にしない』ことを掲げて取り組んできた。スクールバスも安全だと考えられてきましたが、大勢の子どもたちが集まる場所は逆に犯罪者のターゲットになりやすい」

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