「じわじわ動くような移動のショットは好きではないんです。誰の視点なのかと気になってしまう。(カメラに)人格が出てしまうような気がして。フィックスで撮るには、どこからどのくらいの距離で撮るかが大事。そこをすごく考えながら、レンズのミリ数は変えずに、なるべく一定の距離で撮っていきました」

 神様にはなんでもできないことはありません──。その聖書のことばを信じかけた途端、不意に襲ってきた不幸でイエス様に裏切られたと感じてしまう由来。果たして神様はいないのか。ラスト、由来が覗いた障子穴の向こうに見えたのは……。

「神様について普段あまり考えない文化の日本で、どういうふうに受けとめてもらえるのか。その反応が楽しみです」

◎「僕はイエス様が嫌い」
小さなイエス様との出会いを通じて、少年の成長を描く。5月31日から全国順次公開

■もう1本おすすめDVD 「沈黙 サイレンス」

「人間の善と悪とは一体どこで異なり、しかも、それが同時に存在するとはどういうことなのか」

 長年抱えていたそんな思いから自然に映画「沈黙 サイレンス」を作ることになった、と来日時に教えてくれたマーティン・スコセッシ監督。1992年頃に原作者の遠藤周作から内々に承諾を得たものの、以後、法律上の問題から裁判沙汰になったり莫大な弁護士費用がかかったり。27年かかって完成させた。

 江戸時代初期、日本で宣教を続けていた高名な宣教師フェレイラが幕府の拷問によって棄教したとローマに知らせが入る。信じられない二人の弟子、ロドリゴとガルぺは真相を確かめるため、マカオで出会ったキチジローの手引きで、長崎の隠れキリシタンの村へ潜入するが……。

 容赦のない激しい拷問を受けながらも信仰を守り続けて死んでいく村人たち。祈りに応えてくれない神は本当に存在するのか。それでも神を信じることができるのか。見ている間じゅう、信仰という究極の問いを突き付けられた。本作は、苦難と長い年月がかかっても諦めず、人間の本質を探究し続けてきた監督の、映画への信仰そのものだ。

◎「沈黙 サイレンス」
発売元:KADOKAWA/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
価格3800円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年6月3日号