AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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神様は本当にいるのか? 生きていれば誰もが一度は考えることに違いない。
映画「僕はイエス様が嫌い」は小学生の男の子の体験や試練を通して神の存在を問う。監督は、本作が初の長編監督作品となる奥山大史(23)。自身がキリスト教の幼稚園に転園したことで感じた戸惑いやイエス・キリストへの違和感など、実体験をもとに「少年の成長物語」を描いた。
「これが僕の実体験です、と言っても自己満足だけになってしまう。小学生から見ず知らずのおじいちゃんおばあちゃんまで楽しんでもらえる映画にしたい、と思った時に浮かんだひとつのアイデアが『ちっちゃいイエス様』でした」
主人公は、夫を亡くした祖母のため家族で東京から雪深い地方へ引っ越してきた小学生の星野由来。転校先のミッション系の小学校では、みんながお祈りしたり聖書を暗唱したり。由来は神様はいないと思いつつ学校の礼拝堂で一人「神様、この学校でも友達ができますように。アーメン」と祈ってみると、目の前にちっちゃなイエス様が現れた!
イエス様が次々と願いを叶えてくれたり、お風呂で遊んだり、紙相撲をしたり。由来にとって神がごく身近な存在として描かれる本作は、世界3大映画祭に続いて権威のあるとされるサン・セバスチャン映画祭で最優秀新人監督賞を受賞。ストックホルム国際映画祭やダブリン国際映画祭でも最優秀撮影賞を受賞するなど各国の映画祭を沸かせてきた。
「なかでもサン・セバスチャン(スペイン)はクリスチャンが多い国。イエス・キリストが身近な存在だけに描き方や映画の表現方法に不安がありましたが『新鮮だ』と言ってくださった。様々な国へ行かせていただいて思ったことは、キリスト教国以外でも誰もが子ども時代に『絶対的存在への揺らぎ』があるんだなと。みなさんそれを乗り越えて成長しているんだと感じました」
子役のキャスティングをはじめ、こだわりは多くある。なかでも撮影監督として他の作品で経験を積んできた奥山監督だけに、「キャストをどう撮るか」は考え抜いた結果、フィックス(固定)で撮ることにした。