昨春、別業界からIT企業に転職した30代前半の男性は、研修が終わって現場に配属されたあたりから体調が優れなくなった。1カ月の研修を乗り切り、5月に現場へ入ったが、最初に命じられた作業で行き詰まった。

 現場では先輩が付きっきりで教えてくれるということはなく、簡単な説明だけ受けて後は自分で、というスタイルだった。周りはそれぞれ忙しそうに働いており、質問もできない。

「あいつはプライドが高くて聞いてこない」

 と言われるようになった。仕事の進め方もわからず、悩みを相談する先もなく、慢性的な胃痛の症状が続いて6月にカウンセリングを受診したという。このカウンセラーは言う。

「自分より若い社員が活躍するなか、一人で悩んでしまったようです。会社に連絡して、上司と話す時間を取ってもらいました。会社側は『そんなに悩んでいたとは』という反応でした」

 6月は梅雨に入り、季節的にも鬱々としやすい。低気圧の影響で体調を崩す人も多い。大型連休後、7月第3月曜日の海の日まで、丸2カ月以上祝日がないという1年で最長の「祝日空白期間」でもある。6月病の危機はどの職場にも迫っている。(編集部・川口穣、小長光哲郎)

AERA 2019年6月3日号より抜粋