最近あった政治家の主な「失言」(AERA 2019年6月3日号より)
最近あった政治家の主な「失言」(AERA 2019年6月3日号より)
「失言」や「誤解」を防ぐには、というタイトルが付けられたマニュアル。リスク軽減策として「句点を意識して短い文章を重ねる話法」などが挙げられている(撮影/写真部・張溢文)
「失言」や「誤解」を防ぐには、というタイトルが付けられたマニュアル。リスク軽減策として「句点を意識して短い文章を重ねる話法」などが挙げられている(撮影/写真部・張溢文)

 なぜ国会議員の失言が後を絶たないのか。このところ維新の政治家の発言が目立つが、昨年後半以降の政治家の失言(図参照)を見ると、当事者は圧倒的に政権与党の議員が多い。

【写真】「失言」や「誤解」を防ぐには、というタイトルが付けられたマニュアル

 永田町で丸山穂高議員(35)の発言が注目を集める中、あるペーパーの存在が発覚した。参議院選挙に向けて、自民党組織運動本部遊説局が、参議院選候補者、秘書、スタッフを対象に開催した勉強会の内容をまとめたものだ(写真参照)。

 タイトルは「『失言』や『誤解』を防ぐには」。

 その内容はメディアによって政治家の発言は切り取られることを前提に、タイトルに使われやすい「強めのワードに注意」と五つの具体例が示されている。

「歴史認識、政治信条に関する個人的見解」
「ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解」
「事故や災害に関し配慮に欠ける発言」
病気や老いに関する発言」
「気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現」

 特に「歴史認識、政治信条に関する個人的見解」の件には、赤字で「謝罪もできず長期化の傾向」と注意書きがある。

『なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか』の著者で、政治の現場における広告PR等のコミュニケーション戦略に詳しい伊藤剛・東京外国語大学大学院総合国際学研究科講師(43)は、このマニュアルには基本、リスクマネジメントしか書かれていないとした上で、次のように分析する。

「自民党は、政治家個人の見解、つまり本音を隠して、どう『誤解されないか』さえ間違わなければ、有権者は投票してくれるだろうとタカをくくっている。それはあまりにも有権者を馬鹿にした態度ではないか。本来であれば、どうすれば有権者に政策を『理解されるか』を真剣に考えるのが政治の役割ではないか」

 ある現役の国会議員秘書は、こうした最低限のマニュアルを配布しなければならない事情には、二つの理由があると語る。

 一つは党が選挙の候補者を公募制にした結果、候補者がどのような個人的見解を持ち合わせている人物なのかという「身体検査」が追いつかない現実。「魔の2回生議員」がその代表例だと言う。

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