ビッカートは「私たちは長年にわたり、イデオロギーにかかわらず、暴力的なグループを排除してきており、最近、白人至上主義をヘイトグループの定義に含めると発表したところだ」と強調。5月2日に、米国の極右サイトや反ユダヤ主義者を同社関連のサイトから排除したことについて、「オフラインで憎悪的な行動をとっていたことに関連している」と述べ、ネット上の投稿だけでなく、それ以外の現実の社会での言動も考慮にいれていることにも言及した。

 ただ、そもそも、ネット上の言説の善し悪しに関して、FBという一私企業が判断できることには限界がある。創業者のザッカーバーグは23日、「理想的には、こうしたことは民主主義のプロセスとして行われるべきで、だからこそ私は、ネット上の新たなルールや規制の必要性を訴えている。数週間前にはパリでマクロン大統領に会うなど、政策決定者たちに働きかけている」と語った。

 そうした取り組みは15日、フランスやニュージーランドなど18の政府と、FBやツイッターなどの米大手企業らが連携してネット上の暴力的コンテンツの追放に取り組む「クライストチャーチ宣言」の発表につながった。ただ、米国のトランプ政権は表現の自由を侵すおそれを理由に参加せず、まだ大きな流れにはなっていないのが実情だ。

 クライストチャーチの銃乱射から2カ月余り。FBがどれだけのスピードで、暴力的な動画の検知も含めた高精度なシステムを作り上げられるのか、国際社会全体で政府や企業が協力して対処する仕組みをつくれるのかは、まだ見通せない。(朝日新聞サンフランシスコ支局長・尾形聡彦)

AERA 2019年6月3日号より抜粋