「そこにあるのは青春映画にある普遍的なテーマなんです。大人はわかってくれないと言いながら、いつの時代も、世界のどこにも音楽で社会と関わっていこうという若者はいて、彼らは熱い思いをぶつけてきた。抱えている問題と真剣に向き合うことで、強くなっていくんです」

 素人同然だった若い俳優たちも、それぞれの楽器で練習を重ね、バンドとして一体感を増していく。沖縄の高校生らがエキストラとして参加し、映画のハイライトとも言えるライブシーンを支えた。

「若者が一生懸命に歌う姿はそれだけで心揺さぶるものがあります。沖縄特有のノリがバンドを後押ししてくれました」

 バンドが大切に演奏する楽曲の一つが「あなたに」だ。本当に会いたい「あなた」、音楽を届けたい「あなた」は誰なのか。それが明確になった時、音楽は小さな島に残るあらゆる壁を取り払う。

 モンパチのロックが持つ強さを肯定し、沖縄に残る矛盾をも描き出す快作が誕生した。

◎「小さな恋のうた」
企画・プロデュースはモンパチの高校時代の後輩でもある山城竹識。5月24日から全国公開

■もう1本おすすめDVD 「素晴らしき哉、人生!」

 橋本光二郎の映画人生において、決定的な影響を与えたのがフランク・キャプラの古典的大名作「素晴らしき哉、人生!」(1946年)だ。

 クリスマスイブ、主人公のジョージ・ベイリーはある不幸な出来事を機に自殺を決意する。そこに現れた天使が、自分なんか生まれなければよかったと思う主人公のために、もし彼が生まれなかったら……という仮定の世界を見せる。果たして、彼は本当に誰の役にも立たない人生を送ってきたのか?

 原題は「It’s a Wonderful Life」。タイトルにふさわしく、映画はハッピーエンドに向かっていく。

「初めて観たのは16歳のときでしたが、あぁもっと人は信じていいんだなと思いました。46年という日本にとって戦争が終わったばかりの時代の作品ですよね。それが時代を超えて、日本に生まれた僕がこれだけ感動する。映画ってなんて素晴らしいんだ、と思わされた一作です」

 橋本は自身の映画観にも強い影響があると語る。

「キャプラみたいに、僕が作る映画は、観終わった人が背中を押してもらったと思えるようなものでありたいと思います」

◎「素晴らしき哉、人生!」
発売・販売元:アイ・ヴィー・シー
価格2200円+税/DVD発売中

(ライター・石戸諭)

AERA 2019年5月27日号