助成の可否の審査や指導監査は、内閣府から委託された公益財団法人児童育成協会が担う。検査院は、「十分に審査等を行わないまま助成の決定を行っていた」と指摘。所管する内閣府に対し、(1)定員の設定が妥当かどうか適切に審査させる(2)定員充足率の向上に向けた取り組みを行うよう指導させる(3)施設が基準を満たしているか確認するための仕組みを整える──などの改善を求めた。

 定員割れが多発し、待機児童の解消に向けた効果が表れていないことや、助成金の審査体制のずさんさが露呈した。

 その3日後の4月26日、内閣府は企業主導型保育所の16~17年度の運営状況に関する調査結果を発表した。国の助成が決まった2736施設のうち、約1割にあたる252施設が保育事業を取りやめ、うち214施設は開所にも至らなかったことがわかった。57施設にはすでに助成金が払われ、このうち7施設からは返還されていないという。

 別の会社に事業を譲渡したのは44施設。園児や職員の数を水増ししていたなどとして助成が取り消されたケースは秋田と沖縄の2施設。16年度に助成されることが決まったのに、いまだに4施設は開所していなかった。

 9施設を運営する2法人が民事再生の手続きをしていたことも明らかになったが、うち1社が冒頭で触れたANELAだ。

 昨年6月末、同社が世田谷区に設けていた企業主導型保育所で、保育士への給与未払いから一斉退職が起こり、閉園する騒動が起きた。前後してほかの6園の運営も不安定になり、昨年12月1日、7園とも別の会社に事業譲渡された。

 同じく世田谷区の企業主導型保育所「こどもの杜上北沢駅前保育園」が昨年11月、突然休園したケースも注目を集めた。給与未払いなどを理由として、保育士らが一斉退職し、休園。わが子の預け先を失った保護者たちは混乱に陥り、経営者に詰め寄った。

 現場を預かる児童育成協会の関係者は、「実は両事業者とも、保育所開園時の整備費や運営の助成金を高額請求した疑いが強いのです」と明かす。

 協会は今年2月までに、ANELAが運営していた保育所のうち5園に設計士を派遣。現地調査を行い、全園で実態より高額な工事費が見積もられ、その価格設定のまま助成金が請求されていたことを確認した。

 一方、こどもの杜が手がけた4園の工事費を見ても、8千万円台から1億3千万円近い工事請負金額が並ぶ。

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