そんな中で、子どもたちが最も興味を示したのは、豆腐屋さんの店頭で売られているある食べ物でした。

「なあ、あのコロッケ、40円って安すぎひん?」

 あまりの値段の安さに疑いの念を抱きつつ、どうしても味が気になって仕方ない探検隊の一行。これは実際に食べて確かめるしかないということでコロッケを購入してみることにしました。

 揚げたてのコロッケは一口食べるとジャガイモの風味が広がり、ホクホクした感じが何ともたまりません。

「思ってたよりずっと美味しいやん!」

「これはお得すぎる!!」

 予想外の展開に、みんなのテンションは最高潮。フィールドワーク後のふりかえりでもコロッケの話題でもちきりでした。計3回に及ぶフィールドワークでは、「広く探す」をモットーにたくさんの発見や疑問を見つけることができました。

 しかし、出町商店街の探検プロジェクトはここからが正念場です。今まで発見したものの中から各自調べたいことを一つに絞り、いよいよ「深く調べる」段階に突入します。

 2年生のS君はこのコロッケのことが大変気に入り、さらに追究したいと考えました。

 なぜ豆腐屋さんなのにコロッケを販売しているのか?

 あんなに安くて、お店としてやっていけるのか?

 コロッケは一日にどれくらい売れているのか?

「もっと知りたい」というスイッチが入った彼の頭の中に、新たな疑問が次々に浮かんできます。

 それらの疑問を解消するためには、お店の方に直接インタビューして確認するほかありません。ちなみに今回は、個人追究の時間を確保すべく、2人の保護者にボランティアをお願いし、追加調査を3班に分かれて実施しました。

 私とは別の班だった彼は、調査を終えて教室に戻るや否や、インタビューで判明した事実を意気揚々と報告してくれました。

・同じ商店街のコロッケ屋さんが辞めてしまわれた際、豆腐屋さんが引き継いで販売するようになったこと

・手づくりコロッケを仕入れ、店頭で揚げて販売していること

・普通のコロッケ以外にもカレーコロッケやクリームコロッケを40円で販売していること

・家族経営で人件費が抑えられているため、コロッケを安価で提供できていること

 素晴らしい報告結果に私も感心しきり。探検中にふと目に留まり、何となく気になっただけのコロッケも、深く調べていくと面白い発見につながるものですね。

 今回のプロジェクトを通じて、実は身近なところに発見の種がたくさん転がっていることを、子どもたちも実感してくれたのではないでしょうか。

(文/山田洋文)

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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