深野康彦(ふかの・やすひこ)/ファイナンシャルリサーチ代表。個人の資産運用手法に精通。日経CNBCのアンカーをはじめ、メディアで活躍(写真:本人提供)
深野康彦(ふかの・やすひこ)/ファイナンシャルリサーチ代表。個人の資産運用手法に精通。日経CNBCのアンカーをはじめ、メディアで活躍(写真:本人提供)
アドバイスタイプのロボット投資サービス(AERA 2019年5月20日号より)
アドバイスタイプのロボット投資サービス(AERA 2019年5月20日号より)
ロボット投資には2種類ある(AERA 2019年5月20日号より)
ロボット投資には2種類ある(AERA 2019年5月20日号より)
「最低1000円からOK、すべてお任せ」のロボット投資一覧(AERA 2019年5月20日号より)
「最低1000円からOK、すべてお任せ」のロボット投資一覧(AERA 2019年5月20日号より)

 初心者にはハードルが高い投資信託での運用を、AIが全自動でやってくれる。申し込めば、あとは利益を待つだけ。そんな「ロボット投資」が人気を呼んでいる。でも、本当にもうかるの? AIたちの実力のほどは、いかに。

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 せっかくiDeCo(個人型確定拠出年金)口座を開いたのに、投資信託には手を出せずにいる──。そう話すのは東京都在住の会社員男性(35)だ。

「口座を開いて1年が経ちますが、どの投資信託に投資すればいいのかわからず、とりあえず定期預金を積み立てています。掛け金が全額所得控除されるので定期預金でも節税効果はあるものの、月167円の事務手数料が取られるので、口座画面上の運用成績はマイナス。気分的には銀行で天引き貯金をしているのと変わらないですね……」

 2017年に始まったiDeCoの加入者数は今年2月末で118万人に達した。だが日本取引所グループの推計によると、積立金を投資信託で運用しているのは、なんと加入者全体の35%に過ぎないという。

「貯蓄から投資へ」をスローガンに、国は節税や非課税措置の大盤振る舞いをしている。それを受けてiDeCoの口座まで開いておきながら、運用しない人が多いのはなぜなのか。先の会社員は言う。

「たくさんもうけようという気はないんですけど、元本割れが怖くて。どれが損をしない投資信託なのか分からず、一歩踏み出せない状況です」

 そんな初心者の背中を押してくれるのが、AI(人工知能)を使った「ロボット投資」だ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さん(56)に話を聞いた。

「証券各社が提供する『ロボアドバイザー』というサービスを利用すれば、年齢や年収、資産の額や簡単な心理テストに答えるだけで、AIが最適な投資信託を選んでくれます。ロボアドバイザーには、投資信託を選ぶところから売り買いまで『何から何までお任せ』の全自動タイプと、オススメの投資信託を選ぶところまでやってくれて、いざ買ったり売ったりするタイミングや金額は自分で決める『アドバイスタイプ』の二つがあります。超初心者なら全自動タイプから始めるのもいい」

 全自動タイプで投資を始めるには、各社のホームページにアクセスし、年齢、金融資産の金額、年収、運用の目的など簡単な質問に答えるだけだ。これらの回答から、AIがその人のリスク許容度を診断して、投資先の配分を自動で決めてくれる。後は資金を指定口座に入金すれば、運用が始まる。

 全自動タイプの老舗といえるのが、ともに16年にサービスを始めたお金のデザイン社の「THEO(テオ)」と、ウェルスナビ社の「WealthNavi」だ。

 THEOは月1万円から積み立て投資が可能で、株式投資の比率が高い「グロース」、債券比率の高い「インカム」、商品や不動産にも投資する「インフレヘッジ」という三つの投資パターンをその人に合った比率で組み合わせてくれる。運用のタイプは228通りにもなる。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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