小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
2000年頃には網タイツが人気に。ストッキング売り場で色とりどりの網タイツを選ぶ女性(大阪市) (c)朝日新聞社
2000年頃には網タイツが人気に。ストッキング売り場で色とりどりの網タイツを選ぶ女性(大阪市) (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 ストッキング離れが進んでいるそうです。大手メーカーアツギは業績を大幅に下方修正。皆さん穿いてますか?

 10年前は生足が市民権を得てストッキングを穿くのは古くさいイメージでした。だからスタイリストさんから「最近の若い子たちは、肌がきれいに見えるからとストッキングを穿くんですよ。昔を知らないから、かえって新鮮みたい」と聞いて驚いたものです。

 確かに2012年のweb記事(Fashionsnap.com)には、“ストッキングの逆襲”の特集が。若い女性のオシャレとして定着し、12年にはアツギのストッキング売り上げが前年比2桁の伸び、西武渋谷店では売り上げが前年比129.8%とあります。世界的なストッキング復権の理由は11年に英国ウィリアム王子と結婚したキャサリン妃ファッションの影響だという分析も。なるほどねえ。

 18年のweb記事(シティリビング)のアンケートでは、20代の62%が「仕事でも私生活でも穿いている」と回答。30代、40代と年齢が上がるほどその数字は下がります。今回のアツギの減益要因にはインバウンド需要の見込み違いがあるようですが、国内でも以前ほどの勢いはないということか。

 30代、40代は出産・育児で仕事を辞めたり、生活スタイルが変化したりするM字カーブ世代。手取りの減少や私服のカジュアル化もあって、ストッキングとは縁遠くなるのかも。実際私も、子育てをきっかけにすっかり脱ストッキングしたなあ。

 売り場を見ると、今は足指タイプや指先オープンタイプなど進化して多様化。でもやっぱり伝線は避けられないから、コスパが悪いですよね。

 個人的にはいいストッキングを穿いた時の高揚感は好きだけど、クモの糸並みの強度が実現するまではやっぱり、私生活では生足で生きようと思います。

AERA 2019年5月20日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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