一足先に授業を終えた低学年クラスの生徒が集まってきました(写真/筆者提供)
一足先に授業を終えた低学年クラスの生徒が集まってきました(写真/筆者提供)
「こちらで駄菓子屋やってます! ぜひ来てください!」(写真/筆者提供)
「こちらで駄菓子屋やってます! ぜひ来てください!」(写真/筆者提供)

 ゴールデンウィーク初日だった土曜日の午後。探究堂は駄菓子屋に変身しました。子どもたちは商品を陳列したり、値札を貼ったり、看板を設置したりと開店作業で大忙し。普段は教室として利用しているイベントスペースが、みるみるうちにお店に姿を変えていきます。

【河原だって教室になる! 探究堂の『石ころ物語』の様子】

 今日は4月から中学年クラス(小学校3、4年生)が準備を進めてきた「商いプロジェクト」の本番の日。お店で取り扱う商品は、彼らが実際に卸問屋で仕入れてきたものばかりです。

「なぁ、もう買えるん?」

 店先には、一足先に授業を終えた低学年クラスの生徒が集まってきました。駄菓子屋がオープンするのを今か今かと心待ちにしている気持ちが伝わってきます。

「文さん、時間になったんで、開店するで!」

 男の子の掛け声が合図となり、探究堂の駄菓子屋がスタートしました。

「どれにしよかな~」

「やっぱりチョコは外されへんわ」

「これとこれで50円か。もうひとつ買えそう」

 限られた予算の中で、いかに自分が納得いく買い物ができるか。豊富な品ぞろえを目の前に、小さなお客さんたちが楽しみながら悩んでいる光景はほほえましいものです。

「○○くん、買いに来たよ」

 やがて親御さんや学校の友だちも駆けつけ、お店に少しずつ賑わいが出てきました。

 レジでの計算、商品の受け渡しでバタバタしながらも、店員たちの顔には充実した表情が伺えます。

 ただ残念ながら、この状態は長くは続きませんでした。店をオープンして40分くらい過ぎた頃には、ぱったりと客足が途絶えてしまったのです。

「全然お客さん来うへんな………」

 ある意味、自分たちの知り合いはご祝儀客に過ぎず、一般の方にもっとたくさんご来店いただかないと売り上げが頭打ちです。ただ待っていてもお客さんは来てくれません。

 お店は1チーム3人。レジ係に1人残して、他の2人は商店街を通り行く人たちに宣伝活動を行うことにしました。

 しかし、ここでまた新たな問題が発生します。本来リーダーとしてクラスを引っ張っていく立場である一番年長の男の子が呼び込みをしないのです。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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