18年6月に本名を公開してブログを始めた。専門のアトピー性皮膚炎やほくろのがん「メラノーマ」の話題のほか、一人の医師として、迷いや悔いなども素直な気持ちで発信した。これが根拠ある情報だ、と相手に押し付けるのではなく、共感者を増やしていこうと心がけたためだ。それは、医師になった頃、正論を説いてもニセ医療情報に苦しむ患者たちを救えなかった経験があったからだ。

 ツイッターを始めると情報が拡散。同年9月からニュースサイトで連載が始まった。難解な医療情報でも読者にわかりやすく綴られた記事がヒット。SNSを通じて一般に広まっただけでなく、同業である医師の間でも“二つ目の顔”として周知されるまでになった。

 昨冬からはSNS上でつながった医師たちと共に、医師と患者の新たな関係を築こうと、イベントを開催。医療の発展に貢献するには教授になるしかないと思いこんでいたが、今、同じ志を持った医師たちとチームのように活動し、「自分がやりたかったのは、こういうことだ」と実感している。

 この春、新たに企画したのが、学校での出張授業だ。

「インターネット上には明らかに間違った医療情報が多くあります。昨年はインスタで医療者が発信を始めましたが、今後ほかのSNSで医療デマがあふれたら、そのたびに医療者がそこへ移って発信し続けるのは大変ですし、そもそも届いていない人も多く、ネットでの情報発信だけでは限界を感じます。情報の受け手が医療リテラシーを高めて、誤った情報を見ても惑わされないようにしたい」

 4月中旬にSNSで呼びかけると、すぐに小学校数校から応募があった。医師、コラムニストに続く“三つ目”の肩書も生まれそうだ。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年5月20日号より抜粋