──日本国憲法の定める「天皇」という立場である以上、天皇自身が制度に関して意思を表明することには、制約もあります。

山下:けれども、今回のご退位について、仮に上皇陛下がお気持ちを示さずに政府として決めていたら、国民も「本当に陛下はご退位されたいのか」とモヤモヤしたと思います。今の天皇陛下が女性天皇、女系の天皇を望んでおられるのか、それとも男系維持と考えておられるのか、私もわかりません。天皇家の人たちが考えることを我々は尊重するべきでは。

久能:普通のご家庭なら、後継者を誰にするかは、家族の中で考えます。皇室の方々の場合は一切意見を言えないということ自体はおかしいと思いますし、せめて皇室会議の中でご意見を聴くことが必要だと思います。

山下:いずれにせよ、何らかのかたちでお気持ちをお出しにならないと、まとまらない気がしています。上皇陛下のご退位で、前例ができました。16年8月のお気持ちの表明は、事前に内閣と詰めてお出しになったものです。ストレートな言い方ではありませんでしたが、ご退位を考えておられることがありありと感じられた。何らかの方法でお気持ちを表明されて、国民が共感するという形が望ましいのではと思います。

(構成/編集部・小田健司)

AERA 2019年5月20日号より抜粋