歴史学者の新天皇が「水問題」に関心を寄せられるわけは… (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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歴史学者の新天皇が「水問題」に関心を寄せられるわけは…

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北野隆一AERA#皇室
ブラジルで開かれた第8回世界水フォーラムでの基調講演。1982年にブラジルで農牧研究所を訪問した際の写真を示しながら現地の農地開発と利水事業について語る皇太子さま(現天皇陛下)/2018年3月19日、ブラジリアで(代表撮影)

ブラジルで開かれた第8回世界水フォーラムでの基調講演。1982年にブラジルで農牧研究所を訪問した際の写真を示しながら現地の農地開発と利水事業について語る皇太子さま(現天皇陛下)/2018年3月19日、ブラジリアで(代表撮影)

天皇陛下の主な論文・講演(AERA 2019年5月13日号より)

天皇陛下の主な論文・講演(AERA 2019年5月13日号より)

 5月1日に即位した新天皇。幼少時に御用地内の街道に関心を持ち、卒論のテーマに日本中世の水上交通史を選ぶなど、交通史に造詣が深い歴史学者でもあり、皇太子時代からの公務を通じて、日本や世界の「水問題」にも関心を寄せてきた。

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*  *  *
「世界の水問題」に関心が広がったきっかけは2003年、京都で開かれた「第3回世界水フォーラム」だった。

 政府や研究機関など各国の水問題専門家が3年に1回集う国際会議。第1回のモロッコ、第2回のオランダでは、皇太子ら開催国の王室が議長などの重要な役割を果たした。「ぜひ日本の皇室からも参加を」と各国から要望を受け、いまの天皇陛下が名誉総裁に。開会式の記念講演で、開催地に縁が深い琵琶湖・淀川の水運史について語った。

 以来、水をめぐる国際会議での講演を続けるうち、触れるテーマも大学で専攻した水上交通史にとどまらず、利水、治水、環境などに広がっていく。

 元建設省河川局長で、第3回世界水フォーラムの運営に事務局長としてかかわった尾田栄章さんは、陛下の水問題での助言役を長く務める。

 尾田さんは進講の際、水道施設が整っていない国で、女性や子どもが水くみの家事労働にかり出され、社会進出や教育を受ける機会を阻まれていることを紹介した。すると陛下は「私もそのことを感じたことがあります」と応じ、87年に訪れたネパール・ポカラで自ら撮影した写真を取り出した。

 水がめを手に、細々と流れ出る水を求めて集まった女性や子どもたち。陛下はカメラを向けながら「水くみにどのくらいの時間がかかるのだろうか。女性や子どもが多いな。大変だな」と感じたという。20年後の07年、大分県別府市で開かれた「第1回アジア・太平洋水サミット」開会式の記念講演でこう振り返った。

「私は、水が、自分が研究してきた水運だけでなく、水供給や洪水対策、さらに環境、衛生、教育などさまざまな面で人間の社会や生活と密接につながっているという認識を持ち、関心を深めていったのです」

 水問題への関心が広く伝わり、国内外の訪問では、水門や堤防、取水施設や排水施設など、水関係の施設を視察する機会も増えた。16年に山梨県を訪れた際に、武田信玄が戦国時代、洪水を制御するため建設した「信玄堤」や、湧水を地域で分け合う分水施設「三分一湧水」を視察。18年にブラジルで開かれた第8回世界水フォーラムの基調講演など国際会議で、伝統工法が利水や治水に生かされた歴史を紹介した。


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