「結婚をすべての人に」と、同性婚を求める人たち。裁判は、4月に東京、札幌、名古屋などで第1回口頭弁論が開かれた。国は棄却を求め争う姿勢を見せている (c)朝日新聞社
「結婚をすべての人に」と、同性婚を求める人たち。裁判は、4月に東京、札幌、名古屋などで第1回口頭弁論が開かれた。国は棄却を求め争う姿勢を見せている (c)朝日新聞社
西川麻実さん・右(40代) 小野春さん・左(40代)/今回の原告団で唯一、子育てをしている同性カップル。家事も子育ても、親2人でこなしてきた。2人とも「家庭第一」と話す。訴訟について子どもたちは「頑張って」と応援してくれている(撮影/山本倫子)
西川麻実さん・右(40代) 小野春さん・左(40代)/今回の原告団で唯一、子育てをしている同性カップル。家事も子育ても、親2人でこなしてきた。2人とも「家庭第一」と話す。訴訟について子どもたちは「頑張って」と応援してくれている(撮影/山本倫子)
クリスティナ・バウマンさん・右(32) 中島愛さん・左(40)/ドイツでは2017年に同性婚が認められたため、翌18年に2人はドイツで婚姻届を提出し、正式に結婚した。2人は、日本で同性婚が認められたら「日本で結婚式を挙げたい」と話す。バウマンさんは日本の寺や神社、温泉が好きだという(撮影/山本倫子)
クリスティナ・バウマンさん・右(32) 中島愛さん・左(40)/ドイツでは2017年に同性婚が認められたため、翌18年に2人はドイツで婚姻届を提出し、正式に結婚した。2人は、日本で同性婚が認められたら「日本で結婚式を挙げたい」と話す。バウマンさんは日本の寺や神社、温泉が好きだという(撮影/山本倫子)
寺原真希子(てらはら・まきこ)/同性婚訴訟東京弁護団共同代表を務める。東京表参道法律事務所共同パートナー。著書に『ケーススタディ 職場のLGBT』(ぎょうせい)など(撮影/編集部・野村昌二)
寺原真希子(てらはら・まきこ)/同性婚訴訟東京弁護団共同代表を務める。東京表参道法律事務所共同パートナー。著書に『ケーススタディ 職場のLGBT』(ぎょうせい)など(撮影/編集部・野村昌二)
(AERA 2019年5月13日号より)
(AERA 2019年5月13日号より)

 同性婚ができないのは、「婚姻の自由」を定めた憲法に違反する──。2月14日、全国の同性カップル計13組が国を相手に訴訟を起こした。「声を上げられずに苦しむ仲間たちのためにも」と一歩を踏み出した。

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 時代の流れの中で、起こるべくして起きた。今年のバレンタインデーの2月14日。同性婚を求める同性カップル計13組26人が東京、大阪、札幌、名古屋の4地裁で国を相手取り、一斉に提訴した。

 13組は、8都道府県の20~50代。男性同士8組、女性同士5組。日本人と外国人のカップルも含まれる。同性婚ができないことへの違憲訴訟は全国初となる。

 人はそもそもみんな違う。誰が誰を愛しても否定されるものではない。「誰もが平等に結婚できる社会にしたい」「訴訟は尊厳を取り戻す長い旅だ」と原告たちは訴える。

 同性婚は2001年にオランダが世界で初めて合法化した。その後、03年にベルギー、05年にスペインとカナダ、そして10年代に入ると流れが加速する。ポルトガル(10年)、フランス(13年)、アメリカ(15年)、ドイツ(17年)と、今年4月までに世界25カ国で合法化された。しかし、日本では同性婚は法律上、認められていない。主要7カ国(G7)で同性カップルに国が法的保障を与えていないのは、日本だけだ。

●関係を証明できず、入院同意書の記入断られる

 そもそも、日本の法体系の中で家族を明確に定義したものはない。政府は、憲法24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」とする規定をもって「同性婚は想定されていない」との見解を取り、民法が「夫婦」という文言を使用していることを直接的な理由として、同性カップルの婚姻届を「不適法」として受理していない。東京都渋谷区や世田谷区など一部自治体は同性パートナーの証明書を発行し、同性カップルに証明書を発行しているが、結婚と同じような法的地位を認めるものではない。

 同性カップルは何年も「家族」として生活をともにしていても、法律上は赤の他人だ。尊厳を傷つけられるだけでなく、相続、所得税、病院での面会などさまざまな面で、法律上の配偶者と異なる不利益を受ける(表参照)。

 都内に暮らす共に40代の小野春さんと西川麻実さんカップルも、理不尽な経験を何度もしてきた。今回の訴訟の原告で唯一、子育てをしている。小野さんには2人、西川さんには1人、20代で男性と結婚していた時に産んだ子どもがいる。いま子どもたちは、1人は親元を離れ、2人は一緒に暮らす。

 小野さんと西川さんは、ともに離婚し、シングルマザーとして子育てをしながら働いていた20代に仲良くなった。西川さんは中学生のころからレズビアンという自覚があったが、小野さんは最初、女性に対する恋愛感情に戸惑いを感じていた。だが一緒にいる時間が長くなるにつれ、しっくりきた。互いの子どもたちもすぐ打ち解け、30代で同居を始めた。

 家の中では「5人家族」として違和感はないが、一歩「外」に出ると壁が立ちはだかる。

 小野さんの下の子どもがまだ小さいとき検査入院が必要になったが、先に病院に駆けつけた西川さんが家族でないという理由で入院同意書への記入を断られた。

 関係性を証明できないんだ──。「夫婦」とは平等に扱われない現実が身に染みた。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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