専門外の教師におかしな英語をすり込まれるくらいなら、まっさらな状態で中学に送り出してほしい。国際交流機関に勤務経験のあるこの女性は感じた。

 教師たちも不安に苛まれている。首都圏のベテラン女性教師(46)は言う。

「私たち、英語指導の教育を受けてきていないんです……」

 きちんと教えるためには準備が必要だが、その時間もない。

「学校にALTがかなり入ってきていますが、教科担任制になり英語を受け持たずにすめば助かる教師は少なくない」

 この女性教師が勤めていた小学校では5年ほど前に、一部で教科担任制を導入した。学校現場の年齢構成のいびつさを受けてだ。

「いま若年層がすごく増えていて、中堅層が薄い。クラスによって指導力に差が出てしまうため、複数の目で児童を育てムラをカバーする目的で導入しました」

 若手の指導法をチェックしたりスキルを共有したり、見落としているいじめの芽に気づいたり。担任教師とうまが合わない子どもにも拠り所ができるなどメリットは少なくない。

 一方で、本格実施にあたって必要な人員や財源は確保できるのかなど、懸念の声も上がる。この女性教師は、教科担任制が働き方改革の一環として打ち出されると、保護者の理解が得られるのかと心配する。

「教科担任制は『先生たちが楽したいからでしょう』とクレームを受けたことがあります。子どもたちのためなのに……」

 16年の調査で小学校教師の9割が「授業の準備をする時間が足りない」と答えている。その元凶は授業以外の業務の肥大化だ。行事の準備や報告書の作成、調査や保護者からのさまざまな問い合わせの対応……。

 教科担任制の議論を起点に、学校は教科指導の場に絞るのかを再検討する必要がある。そのうえで20年度から全面実施される新学習指導要領の「深い学び」を子どもたちが得るためにはどうすべきなのか。丁寧な検証と議論が必要だ。(編集部・石田かおる)

AERA 2019年5月13日号