近年の高齢ドライバーによる主な事故(AERA 2019年5月13日号より)
近年の高齢ドライバーによる主な事故(AERA 2019年5月13日号より)
都会で自分の車を運転するためのコストは…(AERA 2019年5月13日号より)
都会で自分の車を運転するためのコストは…(AERA 2019年5月13日号より)

 度重なる高齢者ドライバーによる痛ましい事故。自動車メーカー勤務の経験もあるファイナンシャルプランナーの藤川太さん(50)は、車そのものと保険には十分注意するべきだと話す。都市部に住む高齢者にとって、車を保有するメリットはあるのだろうか?

【グラフ】都会で自分の車を運転するためのコストとタクシー代の比較がこちら

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 高齢者は、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)などの運転支援システムを搭載した車に乗ることが必須だという。

「いわゆる自動ブレーキは、明確に衝突事故を減らすことがデータで示されています。若い人にも意味のあるものですが、高齢者が運転するなら必要なコストと考えましょう」(藤川さん)

 自動ブレーキ搭載車と非搭載車の価格差はさほど大きくなく、軽自動車だと価格差5万円程度のモデルもある。しかし、システムだけを「後付け」することは基本的にできないので、いま非搭載車に乗っている場合は乗り換えが必要だ。

 買い替えるかどうかにかかわらず、自動車はタダではない。18年の一般車販売台数トップだった日産ノートの場合、最も人気のあるグレードのものでメーカー希望価格は税込み202万1760円。購入から10年間乗り続けるとしても、1カ月あたり1万7千円近くのコストがかかっている計算だ。

 そして、保険。すべての車が加入する自動車損害賠償責任保険の額は年齢に関係なく決まっているが、問題は任意保険だ。

「保険料は年齢が上がると高くなりますが、それでも補償内容を絞るのは絶対にダメ。必ず『対人対物無制限』のものに入りましょう」(同)

 大手損害保険会社の保険料見積もりサービスで確認したところ、ノートクラスの車で対人対物無制限の補償を選んだ場合、保険料は50歳の人で年額9万円程度。ところが75歳以上では、全く同じ補償内容なのに年12万円超と、3割超も跳ね上がってしまった。

 目に見えにくいコスト増もある。車検時に提案される部品交換は、つい先送りしてしまいがち。だが藤川さんは、高齢者はこれらも必ず対応すべきだという。走行中に小さなトラブルが起こっても、若い人であればすぐに自分で対処できるかもしれない。しかし、加齢によってとっさの判断力が衰えるのは先に述べた通りだ。小さなトラブルでパニックとなり、より大きな事故につながる危険がある。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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