「今の新日本プロレスにはかつてアメリカ社会が連想したステレオタイプな日本人像はない。日本といえばパールハーバーという世代ではなく、アニメやビデオゲームなどおたく文化を受容する新しい世代がジャパニーズ・プロレスを楽しんでいます」

「メイド・イン・ジャパン」の技をWWEの選手が用いるなど、今では日本のプロレスは一定の敬意を表されていると前出の金澤さんは言う。

「新日本プロレスの道場では、アメリカのレスリングやヨーロッパのキャッチレスリングという関節技のテクニックなど世界中のレスリングの要素を取り入れています。そこから選手が育っているのが大きいと思います」

 松本さんには今回の大会で印象的な光景がある。警備員に「今日はバスケットボールの試合?」と聞かれ「日本のレスリングだよ」と答えた。興味がなさそうにしていたその警備員は、空き時間にモニターで食い入るように試合を見始めたという。

「内藤哲也対飯伏幸太の試合でした。ストーリーはいらない。試合を見てくれ。それがいまの新日本プロレスの強みだと思います」(松本さん)(文中一部敬称略)

(編集部・小柳暁子)

AERA 2019年5月13日号