おなかは見せてく!アメリカのマタニティウェア(写真/筆者提供)
おなかは見せてく!アメリカのマタニティウェア(写真/筆者提供)
大井美紗子/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi
大井美紗子/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

 アメリカで妊婦をしていると、頻繁にかけてもらえる言葉があります。それは「You look beautiful」。美的にきれいというんじゃなく(残念ながら!)、命を宿したあなたの体は尊いといったニュアンスですが、ウエストのくびれが消え、むくみ、歩くたびに脂肪がゆさゆさ揺れる体を褒めてもらえるのですから、思わず笑みがこぼれます。

【写真】筆者の大井美紗子さん

 アメリカのマタニティ服も特徴的です。とにかく、どどーんとおなかを強調するデザイン。日本のマタニティウェアは「マタニティに見えない」「おなかが隠れる」を売りにしている服が多い印象ですが、アメリカは反対に見せていく。なぜなら、命を宿したおなかは「美しい」から。

 AERAdot.読者の皆さん、はじめまして。申し遅れましたが、わたくしアメリカでライターをしている大井美紗子と申します。寅(とら)年生まれの32歳。3歳の娘と0歳の息子がいます。娘は日本で、息子はアメリカで出産しました。

 アメリカへ来て、驚きました。妊娠ってこんなに祝福してもらえることだったのかと。隠さなくてもいいんだと。家族や友人はもちろん、スーパーのレジ係さんから通りすがりのおじさんまでが日々「You look beautiful」と声をかけてくれる。社会全体から新しい命を歓迎されているように感じます。

 そりゃ日本でだって、子どもの誕生はめでたいことです。家族や友人は手放しで喜んでくれるでしょう。通りすがりの人がおめでとうと言わないのは、そもそも他人に声をかける文化がないからともいえます。でも、です。たとえば産休を申し出た瞬間、あなたの上司はどういう顔をしましたか? 大きいおなかを抱えて乗り込んだ通勤電車の乗客は? 子連れで入ったおしゃれカフェの店員さんは?

 日本人だって一人一人は優しいのに、妊娠おめでとうという気持ちを多くの人が持っているはずなのに。社会という単位になると途端に醸し出されるこの閉塞感はなんなのだろう。「妊婦だから」「子連れだから」と日本では我慢を強いられる気がするのはなぜ? アメリカに来てからずっと考えていました。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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アメリカで消えた育児の閉塞感