絵だけではない。有名テーマパークのパロディーか、スタッフがみんな不機嫌な遊園地「ディズマランド」を、イギリスに期間限定でオープンさせたり、客室の窓を開けると、イスラエルとパレスチナを分断する壁が目の前にそびえる「世界一眺めの悪いホテル」を現地に開業したり。ちなみにこのホテルは現在も営業中だ。

 昨年はこんなバンクシー作品も有名になった。それが起こったのは、オークション会場でハンマーが鳴り響き、バンクシーの絵が約1億5千万円で落札された瞬間だった。額縁がカタカタと振動し、中にあった1億円超えの絵を切り刻み始めたのだ。バンクシー自ら額縁にシュレッダーを仕込み、作品を切り刻むことで、自身の作品の値段が異常に高額になっていることを皮肉ったのだろう。後日この“作品”は「愛はごみ箱の中に」と名付けられたことが発表された。

 今年1月にはついに日本でも、バンクシーの作品に似たグラフィティが発見された。東京都港区の防潮扉に描かれたネズミは、バンクシーが過去に描いたネズミにそっくり。東京都の小池百合子知事は、「東京への贈り物かも?」とツイッターでつぶやき、都は防潮扉を取り外して、専門家に調査を依頼するという。

 その後、千葉県九十九里町や香川県高松市など、全国でバンクシー作「かもしれない」グラフィティが次々と発見される事態に。こんな大騒ぎを一番おもしろがって見ているのは間違いなくこの人。もしかして今日も、外国人観光客のふりをして、あなたの隣で回転寿司を頬張っている「かもしれない」バンクシー本人だ。(文/ライター・福光恵)

※月刊ジュニアエラ 2019年4月号より

ジュニアエラ 2019年 04 月号 [雑誌]

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福光恵
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