なぜ、ブティジェッジ氏はこれほど支持を拡大しているのか。

 際立っているのは、他の候補者との違いだ。まず若さ。本命とされるバイデン氏、サンダース氏がともに70代である一方、ブティジェッジ氏は37歳。自ら「ミレニアル初の大統領になる」と宣言する。

 保守系有権者が多い中西部で生まれ、故郷で市長になったことも、東部・西部出身者が多い民主党候補者のなかでは珍しい。熱心なキリスト教徒であることも隠さない。こうしたバックグラウンドは、共和党支持者からも共感を呼ぶとされる。一方で、国民皆保険、銃規制、環境政策、賃金格差の解消など、掲げる政策は若者からの支持を集めやすい。

 サンダース氏やバイデン氏がトランプ大統領と舌戦を繰り広げている一方、ブティジェッジ氏は14日の集会で一度も「トランプ」という言葉を使わなかった。「皆で歴史を作ろう」という前向きなスピーチに、大きな歓声があがった。

 ブティジェッジ氏は人口増などで市の再興に成功しているが、過去の大統領が上院議員か州知事出身が多いことを考えれば、人口10万人の市の市長は大統領候補としては心もとないかもしれない。だが16年の大統領選でトランプ氏よりはるかに政治経験があったヒラリー・クリントン氏が敗北したことから、民主党内でも伝統にとらわれない候補者を模索する動きが広がっている。20年の大統領選は、民主党にとって正念場だ。不動産王としてのし上がり、政治家としての力量は疑問符、過激な発言で物議をかもすトランプ大統領とは対照的なブティジェッジ氏に、党関係者が希望を託してもおかしくない。14日の選挙集会で彼はこう訴えた。

「いわゆる政治からは離れて、全く異なるものに向かって歩き出そう」

(ジャーナリスト・津山恵子)

AERA 2019年4月29日号-2019年5月6日合併号