歴代のステージセット模型の巨大さにも圧倒された。ストーンズはミックの心臓弁置換手術のために春の全米ツアーを延期したばかり。手術は成功し、「完全回復」をすると報道されたが、ミックにとっての「完全回復」とはおそらくスタジアムの一塁側ベンチから三塁側ベンチまでをスキップしながら歌うことのはず。今回、あらためて巨大装置を前にすると、75歳で本当にこの距離をスキップするまでに回復するつもりなのか、逆にこれまでよくこの規模のライブを数十年やってきたなと、ミックの超人的体力と気力を思い知らされる。

 ほかにも初期の自筆アンケートでは若きメンバーのキャラが丸わかりだし(キースが意外と律義。ミックは当初から経営者視点)、ギター好きならばキースのテレキャス実機に大興奮だろうし、ステージ衣装の変遷はクレージーだし、マーティン・スコセッシ監督によるストーンズ映画の解説は興味深い。

 展示の最後は「サティスファクション」の3Dライブ映像。ステージかぶりつきの大迫力で、ファンでなくても問答無用に盛り上がらせる。

 最後に。ボウイ展で「展示の字が小さくて読めない」と困っていた中高年ロックファンのみなさん、今回は字が大きいです、ご安心を!(ライター・鈴木あずき)

AERA 2019年4月29日号-2019年5月6日合併号