チラシを丸めて棒状にし、その先端にスズランテープを付けただけの簡易的なつくり(写真/筆者提供)
チラシを丸めて棒状にし、その先端にスズランテープを付けただけの簡易的なつくり(写真/筆者提供)
いよいよ風探しの作戦会議(写真/筆者提供)
いよいよ風探しの作戦会議(写真/筆者提供)

「『風』という言葉を聞いて、頭に思い浮かんだことを教えてくれへん?」

【写真】風探しの作戦会議はこんな風に!

 入塾して間もない幼児クラスのメンバーに問いかけます。

「『風』と言ったら……寒い」

「風が吹いたら、カーテンが揺れるからわかるねん」

「なんで『風』には『虫』という字が入ってるんやろ?」

「扇風機は風をつくる機械!」

 子どもたちは突然の問いかけに一瞬戸惑いの表情を見せたものの、ほどなくぽつりぽつりと自分の考えを述べ始めました。

「お父さん、お母さんはどうですか?」

 せっかくなので、授業に一緒に参加する保護者の方にも聞いてみます。

「『風』の上に『山』をつけると『嵐』になる」

 一人のお父さんが漢字に着目した意見を出してくださいました。

 すると、その発言に触発されてか、子どもたちも次々に自分の意見を出し合うようになりました。

「『嵐』って、普通の風より強いと思うわ」

「風の力で屋根がつぶれるのをテレビで見たことある!」

「竜巻は人とか車とかを持ち上げちゃうんやで」

 最初は人前で話すのを恥ずかしがって声が小さかった子にも徐々に変化が見えてきます。やがて、みんなの意見で模造紙が埋め尽くされていきました。

 探究堂の授業は、テーマについて知っていることや思いつくことを確認するところからスタートします。

 模造紙いっぱいに書かれた『風』に対するイメージが、これからの学びを通じてどう変化していくのか。これがプロジェクト学習です。

 さて、我々に課せられた次のミッションは、「風を探しに行こう!」です。

 そこで、まずはそのお供となる「風探索器」を各自作ることにしました。

 チラシを丸めて棒状にし、その先端にスズランテープを付けただけの簡易的なつくり。しかし、細かい作業に不慣れな子にとっては一つの大きなチャレンジです。

 丸めようとしてもすぐに広がってくるチラシをどうおさえるか。持ち手の部分を丈夫にするには、どの箇所にテープを貼ればよいか。スズランテープをうまく付けるためにはどうすればよいか。時には大人の手も借りながら、子どもたちは作業を進めます。

「文さん(※私のあだ名です)、できた!!」

 自分だけの風探索器を作り上げた彼らの表情はどこか誇らしく満足げで、早速椅子から立ち上がり、教室内で風を探し始めます。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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ここの風めっちゃすごい!