撮影/写真部・片山菜緒子
撮影/写真部・片山菜緒子

 昨年7月に現役復帰を発表した、フィギュアスケーターの高橋大輔さんがAERAに登場。4年ぶりの復帰と今後について語った。

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 32歳で4年ぶりの現役復帰。「大変だったことは?」と尋ねられると、「ありません!」と即答した。

「思った以上に体は年を取っていて、ぎっくり腰や肉離れもしたけれど、練習を継続しなかったツケ。練習を再開して健康体になって、お酒を飲まない日もできて(笑)、体に敏感になった。若返りました」

 語る目は、世界トップを目指していた時期より輝いてみえる。

「少年時代に表情が戻っていると言われます。よい意味でプライドがなくなったかな。引退後しばらくは過去にしがみつく自分がいましたが、今は過去の成績は全部忘れて、新しい自分をつくろうという気分。悩み疲れをしなくなりました」

 現役復帰には二つ意味がある。ひとつは競技復帰、もうひとつは生涯かけて身体表現を追求する決意。7月、源氏物語がテーマのアイスショー「氷艶(ひょうえん)」で光源氏を演じる。

「衣装はまだ秘密ですが、競技では着られないようなボリュームがあって、新しいスケートの世界をお見せできると思います。これから合宿ですが、稽古は大好き! 自分の演技しだいで演出も変わると思うので、よい緊張感があります」

 演出家の宮本亜門との出会いも、大きなチャンスになりそうだ。

「どうやって舞台が作られていくのか勉強したい。いずれ、スケート版のミュージカルみたいな舞台を創設したいと思っているので」

 広がる夢を語る姿は少年のようだ。

「昔から応援してくださっているファンの皆さんは、突然の引退から4年ほど迷っている間も応援し続けていただいたので、復帰で少しは恩を返せたのであればうれしい。スケートの舞台には年配の渋い役も必要だから、引退は70歳くらい? まだまだ先です。ファンの方には貯金していただかないと(笑)」

(ライター・野口美恵)

AERA 2019年4月29日号-2019年5月6日合併号