加納さんが投稿を始めたことをツイッターやブログで発信したところ、同じようにインスタの状況を危惧した医療者たちも次々にインスタでの投稿を始めた。AERA dot.で連載を持つ、京都大学医学部特定准教授で皮膚科専門医の大塚篤司さんの発案で「#インスタ医療団」というハッシュタグができた。

 ネットでの情報収集は、自分が共感する情報に偏りがちになる。ただ、ツイッターは情報を拡散する「リツイート機能」があって、誤った情報やトンデモ情報が指摘を受け修正されやすいが、インスタはリツイート機能がなく、考えに共感しあう人たちで偏った体験談が共有されやすいと、加納さんは指摘する。

 加納さんがネットで発信を始めたのが2016年3月。当初は情報収集が目的だったが、ちょうど妻が第2子を妊娠中で妊娠・出産に関する情報を検索すると、完全母乳で育てるために食事制限を推奨したり、ミルク育児を否定したりする情報があふれていた。

「母乳はビタミンDやビタミンKが少ないというデメリットには触れられていないし、乳腺炎の原因が食事にあるような根拠のない情報もある。誤った情報でお母さんたちが追い詰められないようにしたいと思って」

 とネットで情報発信を始めた。今ではツイッターは4万8千、インスタも3万1千のフォロワーがいる。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年4月29日号-2019年5月6日合併号より抜粋