マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中
イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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*  *  *

「令和」だそうだ。

 4月1日の発表から随分と各所で語られてきたテーマだろう。でも個人的には、令和について初タッチする原稿である。私にも触らせて欲しい、令和。

 しかし、今から書くことは特に新元号にまつわることでもない。非常にためになる「由来」とか、元号制定に関する「暴露話」とかそういうものではない。「ユニークな視点」のやつかというと、それでもないと思う。「じゃあなんだ」と問われれば、答えに窮するタイプのそれだ。

「好きだと解らなくなって、嫌いだとすぐ解る」と「好きだと解って、嫌いだと解らなくなる」という問題は令和になっても続く。きっぱり言い切ってみたが、どうか?

 令和だろうがなんだろうが、そのことはいつまでも人類不変の問題として付いて回るということを言っておきたいのである。そのことを平成から令和にかけて忠告していたのは私だけだったと記憶しておいて欲しい。放っとくと誰も言わないから。

 わかりづらければ、これならどうだ。

「パクチー好きな人は少々のパクチーだと物足りなく、パクチー嫌いな人は微量のパクチーをすぐ感知する……」

 後者ならば……、

「パンクロックが好きな人は一曲一曲の違いが解り、パンク嫌いな人はどれも同じだと言う……」

「何を当たり前な」と笑う事なかれ。これこそが人間生活の歪みの原理であり、あらゆる誤解の出発点なのだ。

 私は怖がりで、そのことによりそれが「鈍感」という感度を手に入れた。一方妻は怖がりが「敏感」という感受性を招いている。地震という事象に対するアプローチに両者の違いは現れる。妻は「地震、怖い怖い!」と言いながらずっと地震のことを調べ、結果、研ぎ澄まされすぎてナマズ並みに地震を察知するまでに至った。私は地震が怖いので見ない、聞かない、調べないでいる。その昔、妻が生まれたばかりの子どもを抱いて寝ている私を踏みつけて外へ出て行ったことがあった。私はなんのことやらわからずに水を飲んだり、のんびりしていたのだが、妻が出て行ったその5分後に地震が来た。似たようなことが度々ある。考えてみて欲しい。そんな二人が一つ屋根の下に暮らしていることを。そして私は今夜も黙って酒を飲む。

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マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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