その一因に、男性中心のモノカルチャーでやってきた企業社会が、それゆえ世界の動きに遅れ、イノベーションの機会を逃したことがある。

 世界経済フォーラムが発表する女性活躍の国際的な指標「ジェンダーギャップ指数」では、日本は公表が始まった05年からずっと低空飛行。18年は世界149カ国中110位、G7では最低という体たらくだ。

 18年に、当時の財務事務次官による常軌を逸した言動が明るみに出たように、女性に向けられるセクハラ、モラハラ、パワハラは枚挙にいとまがない。

 統計サイト「GLOBAL NOTE」が公表する世界の女性議員割合の国別ランキングでは、日本は191カ国中144位。社会を変えようと願っても、女性の声が届く仕組みは、まだまったく整っていない。

 女性進出の先進国と目されてきたアメリカはどうか。

 IT時代の成功者、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ氏は、13年にベストセラー『リーン・イン』で、昇進の機会があっても二の足を踏む女性たちに、「もう一歩、前に踏み出せ。それによって社会は変わる」と檄を飛ばした。そのメッセージは世界を駆け巡ったが、同時に女性の高学歴化、社会進出が進んだアメリカでも、マッチョな男性社会の中で、彼女たちの自己肯定の機会が抑圧されている姿を浮き彫りにした。

 15年には、女性初のプリンストン大学院院長にして、ヒラリー・クリントン国務長官のもとで政策企画部長を務めたアン=マリー・スローター氏が『仕事と家庭は両立できない? 「女性が輝く社会」のウソとホント』を上梓した。こちらは、「トップに上る女性ばかりに目を向けると、ものの見方が歪んでしまう」と、サンドバーグ氏の檄からこぼれ落ちる、圧倒的多数の働く女性たちの苦しみを訴えている。

 昇進を選べる女性がいる一方で、家族の役割から逃れられない女性もいる。あれも、これもと、いろいろな生き方モデルが登場したことで、価値観が混乱し、みんなが惑っている。アメリカも、日本もその点では同じなのだ。

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