末盛さんの父、舟越保武氏の彫刻展「まなざしの向こうに」で、代表作の一つ「ダミアン神父」像を鑑賞される美智子さま(左)と末盛さん/2015年8月、練馬区立美術館で  (c)東京都練馬区
末盛さんの父、舟越保武氏の彫刻展「まなざしの向こうに」で、代表作の一つ「ダミアン神父」像を鑑賞される美智子さま(左)と末盛さん/2015年8月、練馬区立美術館で  (c)東京都練馬区
末盛千枝子(すえもり・ちえこ)/1941年生まれ。美智子さまが英訳したまど・みちおの詩集『どうぶつたち』、ニューデリーの講演録『橋をかける 子供時代の読書の思い出』を編集者として手がけた。岩手県在住(撮影写真部・/掛祥葉子)
末盛千枝子(すえもり・ちえこ)/1941年生まれ。美智子さまが英訳したまど・みちおの詩集『どうぶつたち』、ニューデリーの講演録『橋をかける 子供時代の読書の思い出』を編集者として手がけた。岩手県在住(撮影写真部・/掛祥葉子)

 今月末の天皇陛下の退位を控えた皇后美智子さま。二十余年にわたり親交を深めてきた編集者の末盛千枝子さんが、飾り気のない美智子さまの素顔を明かす。

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 いつになくくつろいでいる美智子さま(84)の姿があった。2月に御所へ伺ったときのこと。「どなたかの手編みかしらと思うような、ふわっとしたオフホワイトのカーディガンをお召しになっていらして」と末盛千枝子さん(78)。それは初めて見る軽やかな装いでもあったとほほ笑む。

 4月末の天皇陛下の退位を前に、『根っこと翼 皇后美智子さまという存在の輝き』を上梓した末盛さんは、執筆を依頼された際、美智子さまに相談した。すると、「他の人たちとは全然違う視点で私のことを見ていてくれるからいいんじゃないかしら」と了解して下さったという。

 美智子さまの講演録『橋をかける』の出版以来、二十余年にわたり親交が続く。<そういう中で、知り、感じる皇后さまの素顔は、私一人の中にしまっておくのはあまりにもったいないように思ってきた>ということが、『根っこと翼』を執筆した動機だとつづる。

「けっこうおちゃめで、可愛らしいところがおありなんです」

 今も目に浮かぶ麗しいシーンがある。2013年4月、国際福祉協会創立60周年を記念した晩餐会で20年ぶりにダンスを披露する両陛下の姿が報じられた。

 美智子さまはオーガンディのような薄いピンク色のドレスをまとい、お二人とも幸せそうに見つめ合いながら踊っている。後日、末盛さんが「あまりに素敵で見惚れてしまいました」とお話ししたところ、

「皇后さまは『陛下が誘ってくださったの』と嬉しそうにおっしゃったの。ダンスパーティーで誰も誘ってくれなかったらどうしようと思うような娘時代を彷彿とさせるでしょう。最初の曲は、お二人で初めて踊った曲『シャルメーヌ』を陛下がリクエストなさったというのです」

 折にふれて美智子さまから聞く秘話も楽しい。その一つが、大きなパンダのぬいぐるみの話。かつて陛下との婚約が整ったとき、同級生からお祝いに贈られたものだ。いよいよ花嫁の荷物が御所に運び込まれた日、パンダに気づいた陛下が自ら抱え、2階の美智子さまの部屋まで運び、椅子に座らせたという。

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