国土交通省は成長戦略の一環として「みんなで進める、コンパクトなまちづくり」をスローガンに、各自治体に立地適正化計画の策定を促している。今後の少子高齢化に耐えうる街をつくるため、人口減少の中にあっても人口密度を維持するエリアとして居住誘導区域を設定し、住人をそのエリアへ誘導することを目指したものだ。

「もし住宅の新規購入、住み替えを検討しているなら、自分の買いたいエリアが立地適正化計画の居住誘導区域に指定されているか確認したり、また、今ある防災拠点や医療・福祉施設、商業施設などが将来にわたり維持される可能性が高いかどうかを吟味したりしてください。負動産を抱えてしまわないための防衛策です」(同)

 実際の「負動産」と「富動産」を見比べてみたのが表だ。

 case1は、都内人気エリアであるJR中央線・西荻窪駅が最寄りで、ほぼ同じ築19年、約56平方メートルの中古マンション2件を比べたものだ。両方とも新築時の価格は4千万円台なのに、片や負動産は930万円も値下がりし、富動産は470万円値上がりしている。

 この差を生んだ最大の要因は駅からの距離だ。「負」は徒歩14分かかるのに対し、「富」は徒歩2分。便利なエリアで駅近であることは、19年経っても470万円のプラスを生み出す。また、「負」は3階、「富」は11階。階数が一概に差を生むわけではないが、上の階のほうが資産価値は高くなるのがセオリーだ。両者には2LDKと1LDKという違いもある。ただ、築年数が経って売却する際には買い主や販売会社が室内をリフォームすることが多いため、間取りの影響は低い。

 case2は、バブル期に建てられたさいたま市と東京都世田谷区経堂の中古マンションの比較だ。さいたま市のほうは大宮駅から徒歩15分、経堂は10分。築年数は約30年と同条件だが、前者は新築時より1390万円値下がりした負動産、後者は80万円値上がりした富動産に。

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