「相続がきちんとされずに長年放置されたままの空き家は、全国で増えています。多くの人は、空き家問題は地方の話で首都圏は大丈夫と思っているでしょう。しかし2033年には3戸に1戸が空き家になるという予測もあります」(野澤さん)

 実際、埼玉県の中核都市近辺でも駅から徒歩20分以上のマンションは売値400万円でも買い手がつきづらい。価格を下げても売れずに放置される空き家は、まさに負動産の代表格だ。

『負動産時代』(朝日新書)の著者の一人、朝日新聞記者の松浦新さんも警鐘を鳴らす。

「不動産が厄介なのは、売れなくなっても捨てられないことです。戸建ては家を潰して更地にできるから、まだいい。問題は耐用年数が50年程度といわれるマンションです。共有している住人の合意を取らない限り、壊せない。今、地方で顕在化している負動産の存在は、今後間違いなく、都市部のマンションでも深刻な問題になるでしょう」

(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2019年4月22日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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