長澤さんの挑戦には批判も多い。「キワモノ」と扱われ、インターネットのスレッドには侮蔑するような言葉が並んだ。

「どこがラグビー振興になるのかわからない」
「山をナメるな」
「単なる目立ちたがり」

 一方で、支援する人も増えている。3回にわたって行ったクラウドファンディングではのべ400人以上が出資した。青森県のリサイクル企業・青南商事は、スポンサーとして資金援助する。代表取締役の安東元吉さんが長澤さん本人と会い、支援を決めた。

「ユニークで難しい挑戦に本気で取り組む長澤さんの姿勢にひかれました。長澤さんの挑戦を通して、これまでラグビーに興味がなかった人たちにもラグビーを知ってもらい、ワールドカップが盛り上がることを期待しています」(安東さん)

 残りは5カ国。富士山を除く4山はいずれも標高5千メートルを超え、技術的にも簡単ではない。6月に挑むアメリカのデナリには昨年挑戦し、悪天候に阻まれて失敗している。

「撤退を決めたときは、全てをかけて紡いできた糸がプツンと切れたようでとても落ち込みました。もう負けられないです」

 順調にいけば、7月に24カ国目としてヨーロッパ最高峰でもあるロシアのエルブルスに挑み、8月に富士山で完結する。

「応援してくれている人のためにも、何とかやり遂げたい。富士山頂から、日本代表に大きなエールを送りたいですね」

 取材の最後、「死なないでくださいね」と伝えた記者に、長澤さんは力強くうなずいた。長澤さんの挑戦の成功を祈りつつ、W杯を待ちたい。

AERA 2019年4月15日号より抜粋