ヘッドセットマイクをつけて声を掛けながら名刺大のリーフレットを配布する森田由紀さんは渋谷区議選に2度目の挑戦。「今回は一人一人の目を見ながらお渡しできるようになりました」(撮影/小原雄輝)
ヘッドセットマイクをつけて声を掛けながら名刺大のリーフレットを配布する森田由紀さんは渋谷区議選に2度目の挑戦。「今回は一人一人の目を見ながらお渡しできるようになりました」(撮影/小原雄輝)
統一地方選の女性候補者の擁立状況(AERA 2019年4月15日号より)
統一地方選の女性候補者の擁立状況(AERA 2019年4月15日号より)

 昨年5月に候補者男女均等法(日本版パリテ法)ができて初めての統一地方選挙が始まった。女性候補者への支援金を増やし、専用の相談窓口を設けるなど各政党は女性候補を増やそうと取り組んでいるが、その擁立状況は候補者男女半々には程遠い状況だ。

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 女性の有権者が政治を敬遠する気持ちも、壁として立ちはだかる。東京都渋谷区議選に無所属で立候補する森田由紀さん(48)は結婚を機に渋谷区民になり、第2子を出産後にNPO法人を設立。子育て世代の女性が自由に働き方を選択できる場づくりを進めてきた。

 代官山の魅力を発信し、清掃や落書き消しなど地元に根ざした活動をする中で、社会問題の解決に取り組む多くの団体と連携してより愛着のわく渋谷をつくりたい、と立候補を決意した。

 地方選挙は現職の力が強く、新人、しかも無所属の候補者にとっては、これまで選挙に関心のなかった人に応援してもらうことが当選の鍵を握る。だが森田さんは、女性の知人に選挙に出ることを伝えた際、相手がよそよそしくなったり、相手との溝を感じたりしたことがあった。その後はママ友などプライベートな知り合いには立候補のことを伝えられないでいる。

「政治や選挙の話題を嫌がる女性は少なくなくて、選挙に出ると言うだけで距離を置かれてしまう。女性の声を議会に届けるためには、もっと女性自身が本気になって女性候補を増やそうと思わないと難しいのではないでしょうか。私じゃなくてもいい。女性候補者たちに力を貸してほしいなって思うんです」

 駒澤大学の大山礼子教授(政治制度論)はこう語る。

「地方議会は特殊な人たちの指定席になってしまっていて、選挙に出るというと、その仲間に入るという目で見られてしまう。政治と距離を置く人も多く、その結果、既得権者である議員たちの恩恵にあずかる人だけが投票する。選挙に関心のない住民が地域を悪くしているのです」

 初の女性活躍担当大臣も務めた有村治子参議院議員(48)も言う。

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