立憲民主党公認で川崎市議選に立候補した鈴木朋子さん。選挙活動のスピーカーの音量は控えめ。「一方的に叫ぶようなやり方は、以前からいい印象がなくて」。悩みながらの選挙戦だ(撮影/小原雄輝)
立憲民主党公認で川崎市議選に立候補した鈴木朋子さん。選挙活動のスピーカーの音量は控えめ。「一方的に叫ぶようなやり方は、以前からいい印象がなくて」。悩みながらの選挙戦だ(撮影/小原雄輝)
八王子市議選に立候補する西室真希さん(中央)の選挙事務所では、毛筆で力強く書かれた為書きがずらりと並んだ先にカラフルなキッズスペースもあり、子どもたちの弾むような声が響く(撮影/小原雄輝)
八王子市議選に立候補する西室真希さん(中央)の選挙事務所では、毛筆で力強く書かれた為書きがずらりと並んだ先にカラフルなキッズスペースもあり、子どもたちの弾むような声が響く(撮影/小原雄輝)
統一地方選の女性候補者の擁立状況(AERA 2019年4月15日号より)
統一地方選の女性候補者の擁立状況(AERA 2019年4月15日号より)

 昨年候補者男女均等法が成立・施行され、初めて迎える統一地方選。法律ができても変わらないのが、昔ながらの選挙スタイルや政治への意識だ。女性候補者たちは多くの壁にぶち当たっている。

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 朝5時すぎに家を出て、9時すぎまで駅頭に立つ。川崎市議選に初挑戦する鈴木朋子さん(54)の日課だ。

 多くの人が出勤する時間帯に合わせての活動だが、息子(12)を学校に送り出す時間でもある。同居の母は90歳と高齢で、夫も仕事や兄弟の介護で忙しい。息子が忘れ物をしたり、朝の活動を終えて戻ると登校せず家にいたりする日もあった。家事や育児を後回しにして駆け回る日々の中で、会う人から掛けられる「お子さん、大丈夫?」という言葉が胸に突き刺さる。

 行政書士として地域の声を聞いたり、乳がんを経て社会復帰したりした経験から政治の道を志し、立憲民主党の公認を得た。誰もがいつでもやりたいことに挑戦できる社会を目指しているのに、自分自身は大好きな息子を後回しにして何をしたいんだろうか、と考え込んでしまうこともある。早朝から夜までの活動に限界を感じ、夕方の駅頭あいさつは週1回に減らした。

 昨年5月に候補者男女均等法(日本版パリテ法)ができて初めての統一地方選挙が始まった。女性候補者への支援金を増やし、専用の相談窓口を設けるなど各政党は女性候補を増やそうと取り組んでいるが、その擁立状況は候補者男女半々には程遠い状況だ。中でも多くの候補者が立候補する自民党では統一地方選前半(道府県議選・指定市議選)の女性候補者の割合が4.9%と低迷する。何が壁になっているのか。

 大きく立ちはだかるのが、「24時間戦えますか」とばかりに早朝から夜遅くまで駆け回る従来の選挙や議員活動だ。鈴木さんはこう言う。

「仮に女性議員が一時的に増えても、政治の世界でリーダーになって社会・政治を変えていく女性を生み出せるかどうかは疑問です。男性社会に追随しなければ、生き残ることは難しい空気を強く感じるからです」

「政治は男性のもの」「子育ては女性がするもの」といった意識の壁もある。

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