その事情を作り出しているのが、日銀である。何しろ、国債が売り出されるそばから日銀が買ってしまう。しかも、長期金利がゼロ近傍におさまるように相場を管理している。要は日銀こそが価格操作の張本人なのである。相場が動かなければ儲けが出ない。追い詰められた相場師たちとしては、ついつい、不動の相場に不正行為でテコ入れしたくなってしまう。

 しかも、日銀が買い占めているおかげで、国債市場は品薄状態に陥っている。だから、実はその気になれば価格を操作しやすい。不動の相場を作り出そうとするあまりに、日銀がかえって操作性の高い市場環境を整えてしまっているのである。何とも奇妙な光景だ。

 筋の通らない政策を延々と続けていると、必ず、こういう奇妙な絵図を描き出すことになってしまう。金融政策と称して長らく国債の価格操作をやってきた真犯人さん。そろそろ御用といきたいところだ。

AERA 2019年4月8日号

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浜矩子

浜矩子

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

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