能力的に成功は不可能ではない羽生だが、注意すべきはケガ。

「若い頃みたいにがんがん練習すれば跳べるっていうジャンプではない。僕の場合は失敗するリスクよりも、ケガをするリスクを考えて、練習していかないといけない」

 最高のライバルに刺激され、4回転アクセルは夢ではなく目標になった。

 一方、宇野昌磨(21)は初めて優勝を意識した試合で結果が残せず4位。技術的には3種類の4回転を持ち、羽生、チェンと遜色ないレベルだが、緊張感からミスが出た。しかし気を引き締め、来季の計画を表明した。

「勝ちを求めると、力が出せなかった。僕は心が弱く、それは簡単には変えられない。ならば、いつもの7割の力しか出せなくても戦えるよう、練習のレベルを上げるしかない。具体的には4回転フリップを2本、一つは後半に入れること。あと4回転ループも練習し直します」

 4種類の4回転を練習し、その中で最も得点の高いフリップを2本にする。決死のジャンプ構成に向け、再スタートした。

 また日本女子も4~6位と、世界の壁に阻まれた。女子の戦いは今後どう展開していくのか。

 紀平梨花(16)は4回転2種類を練習で成功しており、来季に向けて海外で技術習得を目指す。坂本花織(18)も来季にはトリプルアクセルを必ず成功させるという。優勝したアリーナ・ザギトワ(16)は「4回転よりも、今の完成度を高める」と話しており、日本勢はジャンプ技術で上回る作戦をとることになる。いよいよ訪れる女子の新ジャンプ時代。新たな戦い方を作るのは、日本女子だ。(ライター・野口美恵)

AERA 2019年4月8日号より抜粋