ショート、フリーとも1位で完全優勝を果たしたネーサン・チェン。羽生の世界最高得点を直後に塗り替えた(撮影/写真部・加藤夏子)
ショート、フリーとも1位で完全優勝を果たしたネーサン・チェン。羽生の世界最高得点を直後に塗り替えた(撮影/写真部・加藤夏子)
エキシビションを終え、選手たちは笑顔で記念写真に納まった。すでに次に向け戦いが始まっている (c)朝日新聞社
エキシビションを終え、選手たちは笑顔で記念写真に納まった。すでに次に向け戦いが始まっている (c)朝日新聞社

 3月24日に閉幕した世界フィギュアスケート選手権で、アメリカのネーサン・チェン選手が完璧な演技で二連覇を達成した。一方で、ショートの4回転のミスが響き、羽生結弦選手は2位。来季の日本勢の戦略はどうなるのか。

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 羽生結弦とネーサン・チェンのフリーでの神がかった二つの演技は、フィギュアスケート史に残る8分間だった。一方で、羽生とチェンには総合得点で20点以上もの差がついた。

 チェンの一番の強さは、圧倒的な身体能力が支える4回転ジャンプだ。5種類の4回転を成功、なかでも得点が高いルッツとフリップを得意にしている。

「僕にとって4回転は特に難しいジャンプではありません」

 とさえ言い切る。課題は精神面と、唯一苦手なトリプルアクセル。平昌五輪では優勝の期待を背負った重圧から、ショートで崩れ、フリーは1位で巻き返すもメダルを逃した。

 しかし今季は、何の不安もない。まずエール大学に入学し文武両道の生活となったことが、プラスに働いた。

「素晴らしい学生仲間に囲まれて、自分にはスケート以外にもやれることがあると痛感しています。スケートも勉強も、両方が新鮮な刺激になります」

 スケートへの義務感がなくなり、むしろ演技は伸びやかに。気負いが取れ、トリプルアクセルも安定した。1月の全米選手権では計6本の4回転を成功させ、2月は勉強に専念、3月に練習を再開し、世界選手権で再びパーフェクトな演技を見せた。

 難攻不落に思えるチェンと、羽生はどう戦えばいいのか。

 羽生は今回、演技構成点はショート、フリーとも1位で、表現力への評価は最高だった。いわば格付けはトップと評されたに等しいが、潔く言い切った。

「もし今回ショート、フリーともパーフェクトだったとしても、ギリギリでネーサンには勝てなかった」

 となると、やはりチェンに勝つためには新たなジャンプの習得が必要だ。羽生は会見で、意を決したように宣言した。

「4回転アクセルを跳びます、試合で。試合で決めて公式記録にならないと意味がないので」

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