撮影/横山マサト
撮影/横山マサト

 環境の変化もおそれず自在な動きで活動する、山口一郎さんがAERAに登場。サカナクションのボーカル、そしてミュージシャンとして、この時代の音楽の在り方をどう見ているのか。

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 ロックバンド・サカナクションのボーカリストで、ほとんどの楽曲の作詞・作曲を手掛ける山口一郎というミュージシャンのおもしろさは、単に「新宝島」などの大ヒットを持ち、J−POPシーンを代表する人気バンドの中心人物であるというだけではない。激変する時代に音楽が社会とクリエイティブに関わる方法を考え続けているところにもある。

 6月に発表が予定されている6年ぶりの新作「834.194」。この間発表されたシングル曲や、山口自身が登場するテレビCMで発表された新曲「ナイロンの糸」「忘れられないの」などを含めたCD2枚組になるという。発売に先駆けて行われる、6.1chサラウンドという最先鋭の音響システムを導入したアリーナツアーもアナウンスされている。

「アルバムタイトルの謎はまだここでは明かしませんが、20代前半まで北海道で暮らして、その景色を見て育ってきた。僕という若者が東京というモノクロな街でどう変わっていったのか、その謎を解き明かすようなアルバムになるんじゃないかと思っています」

 自分のやりたい音楽を守る。その可能性はスマホ決済サービスや店舗の音楽設計にサカナクションとしてかかわることのなかにもある。

「メジャーデビューという言葉も死語になっている。ユーチューバーがミュージシャンになる時代ですからね。音楽を利用して売れたいという人たちと、売れることが目的じゃなくいいものだけを作りたいと思っている人たちの間、マジョリティーとマイノリティーの間みたいな存在がこれから必要になってくるんじゃないかな。僕らはそこに本質があるんじゃないかと思っているんです」

 その言葉は音楽の話からはじまる、来るべき未来をひらくヒントのように聞こえた。(ライター・松永良平)

AERA 2019年4月8日号