TOPIXがプレミアム市場の銘柄を対象にした指数になった場合、ETFの運用会社やGPIFなどがプレミアムに残れなかった銘柄を自動売却することになる。またTOPIXは株価指数としての連続性を失うことになり、TOPIXに連動する投信の基準価額(値段)も荒れるだろう。

 3月には「情報漏れ」を指摘する報道があった。それによれば、1部昇格・降格のボーダーラインについて、東証は時価総額500億円ではなく250億円に設定したい意向だとの情報が証券大手から機関投資家らにメールで配信されたという。情報の出所は市場再編を議論する東証の有識者懇談会の委員と書かれていたことから市場関係者の疑心暗鬼を呼んだ。

 マーケットが「250億!? 本当かそれは」と騒いでいる傍ら、3月は12社が東証1部の仲間入りを果たした。いずれも時価総額は数百億円だ。財産ネット企業調査部長の藤本誠之さんは、「せめて検討中は1部昇格を凍結するべきです。審査料を取って1部に昇格させた直後に降格を言い渡す事態になれば、東証は企業から訴えられかねません」と語る。

 市場再編に向けた議論は今後も続く見通しで、東証と経済産業省の摩擦も予想される。

 SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは、「今いい銘柄と今後改善が期待できる銘柄のどちらが優良銘柄であるかは、有識者や取引所ではなく、投資家が決めることです」と指摘。東証がプレミアム市場を新たに作ることは優良銘柄とそうでない銘柄の線引きをすることにつながり、「投資家の自由度を阻害します」と批判している。(経済ジャーナリスト・大場宏明、編集部・中島晶子)

AERA 2019年4月8日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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