竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
1年前の入社式の様子です。緊張した面持ちですが、いまは皆、仕事にも慣れ、頑張ってくれています
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1年前の入社式の様子です。緊張した面持ちですが、いまは皆、仕事にも慣れ、頑張ってくれています

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 いよいよ4月、新しい環境でスタートを切る方も多くいらっしゃると思います。人事も含め、春は人との出会いが多い季節。私にも、忘れられない人との思い出があります。

 大学4年生の時、私は三菱商事への入社を決め、ある鉄鋼メーカーからの内定を辞退することになりました。内心、「怒られるかもしれない」と覚悟しながら、人事部長に申し上げると、「残念だが、三菱商事はとてもいい会社だ。将来、世界のどこかで一緒に仕事をすることもあるかもしれない。その時はよろしく」と、逆に激励してくださったのです。真逆の対応の会社もあったので、世の中にはこんなにも懐が深く、素敵な言葉をくださる方がいるのだと感激しました。

 それから約17年後、三菱商事で社長秘書をしていた時のことです。当時、社長は経団連などで財界活動をしており、秘書として時の首相の外遊に同行するなど外交的な仕事も必要になってきました。でも私は経験が浅く、国際舞台での社長の補佐のあり方もわからない。そこで助けてくれたのが、先の鉄鋼メーカーの社員の方だったのです。他社の私に、丁寧に「補佐の務め」を教えて下さいました。かつてのエピソードを伝え、「こうして御社と再びご縁ができて本当に嬉しいです」と申し上げました。その鉄鋼メーカーの方々との出会いは、人とは、会社とはこうありたいという私の手本にもなっています。

 ほかにも、新人の私の指導をされた三菱商事の先輩からは「仕事ができるだけでなく、こんなにも勉強が好きな人がいるのか」というカルチャーショックを受けたり、食肉担当をしていたときのバイヤーの方と、私がローソンに来てからもまた一緒に働くことになったりと、多くの人との出会いによって、今の自分があると感じています。

 今年度もどんな人と出会えるのか、ワクワクしています。

AERA 2019年4月8日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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