平成生まれのクリエイターが、平成の終わりを表現する。そんなプロジェクトも話題だ。「平成ゆとりTシャツ」プロジェクトと富士フイルムがコラボレーションした写真イベント「平成が終わルンです」。プロジェクトを仕掛ける稲沼竣さんと峯尾雄介さんは、ともに1991年生まれの27歳、高校の同級生だ。

「昨年夏、平成最後の夏だし……って思いついたのが『平成ゆとりTシャツ』。色は白か黒で、デザインは平成の年号(1989~2019)のみ。ゆとり世代を表現して、サイズはLサイズ以上にしました。このシャツを買ってくれた平成生まれの人のうち、100人に富士フイルムの「写ルンです」を渡して、夏が終わる8月31日に撮影してもらい、秋に写真展をやったんです」

 予想以上の反響を呼び、今度は1千人による「平成が終わルンです Final」を企画。7人の平成生まれのクリエイターとのコラボ「平成コラボTシャツ」を期間限定販売した。写真展は参加希望者が倍増したので急遽「2千人による写真展」に変更して準備に追われている。

 この盛り上がりを稲沼さんは「平成世代特有のエモさ」にあるのでは、と分析する。

「僕らは『ゆとり世代』と一括りにされてきた。そこに強い反発心があるわけじゃないけど、ゆとりっていう言葉があったおかげで、緩やかな団結心みたいなものはあるような気がします。だから年号のTシャツに『俺たちのシャツじゃん』と反応があった。昨夏の写真展も、仕掛けた僕らよりさらに若い、10代から20代前半がたくさん来てくれました」

 この世代のパワーワードは「エモい」だという。

「平成に限らず、何かの終わりが見えた瞬間がエモい。それを写真という手段で切り取ったことが共感を得たんだと思う」(稲沼さん)。

 言うまでもなく「写ルンです」は「レンズ付きフィルム」だが、スマホ世代にはそれも「エモい」らしい。

「一周回って、不便さがエンタメなんです。世の中便利になりすぎてるから制限のあるものが楽しい」と峯尾さん。「写ルンです」を使うのも、撮れるのが27枚だけだから。現像するまで結果もわからない。

「だから一枚一枚、一瞬一瞬がすごく大事になる。これまで平成=人生だった僕らには、まるで卒業式に向かってどんどん気持ちが高まっていくような、そんな感覚なんです」

(ライター・浅野裕見子)

AERA 2019年4月1日号