道徳的な選択を!(AERA 2019年4月1日号より)
道徳的な選択を!(AERA 2019年4月1日号より)
米国を再び偉大に!(AERA 2019年4月1日号より)
米国を再び偉大に!(AERA 2019年4月1日号より)

 米大統領選を来年に控え、芸能界の大物たちの発言も熱を帯び始めた。スターたちをも分断する原因は大統領。支持派と反支持派が激しく火花を散らす。

【トランプ支持者はこちら】

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 米大統領ドナルド・トランプ。この人物や政策をどう捉えるか。注目を集める場で、米ハリウッドのセレブたちが強い言葉を発信し始めている。

 2月末にハリウッドであった恒例の米アカデミー賞(オスカー)授賞式。際だったのは、人種差別問題に長く取り組んできた映画監督スパイク・リーのスピーチだった。

 リーは、監督も務めた映画「ブラック・クランズマン」で脚色賞を得て、アカデミー賞を初受賞。壇上でリーは来年の大統領選について直接的に語り始めた。

「2020年の大統領選はもうすぐそこだ。すべてを動員しよう。歴史の正しい側に立とう。愛と憎悪の間で、道徳的な選択をしよう。正しいことをしよう(レッツ・ドゥ・ザ・ライト・シング)」

 自身の映画の題名にかけてリーがこう語ったとき、会場は大きな拍手に包まれた。その裏手にある、私がいたプレスルームでさえ、記者たちの大歓声が起こった。

 そのリーのメッセージにすぐにツイートで反応したのは、トランプその人だった。

「(リーは)自分の大統領に人種差別的な攻撃をしていたけれど、その大統領は、ほかのほとんどの大統領よりも、アフリカ系米国人のためになることをしてきたのに」

 トランプは、リーに対し、大統領としての自分をもっと尊重するよう求めたのだった。リーは、トランプの名は挙げておらず、「正しいことをしよう」と抽象的に語ったにすぎない。にもかかわらず、すぐに反撃した大統領の姿勢は、ハリウッドからのメッセージを必要以上に気にするトランプの心の内を明かすものだった。

 とはいえ、反トランプを呼びかけていたことは明白と言えた。そして、この日発表のアカデミー賞全体が、トランプの言動が米国内でかき立てているといわれる、人種やマイノリティーに対する差別や反移民の感情に対抗しようとする大きなメッセージを発していた。

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