「本学は創立者の中島氏が平成20年1月21日に逮捕され、2年の実刑判決が下された事件以降、大学の経営や教育に一切関与させておりませんし、今後も同様です。理事、評議会、教職員のいずれでもなく、教授会、その他委員会、全体ミーティングにも全く出席しておらず、大学からの給与、報酬は一切与えておりません」

 だが、本誌は複数の関係者から、中島氏が実刑判決後も職員向けに年初の挨拶を行ったり、教員研修で指示を出したりしていることを確認している。

 実質的な経営支配は服役中も行われていた。本誌が入手した資料によれば、服役中も中島氏から学校幹部に細かい指示が飛んでいる。差し入れや次回面会者の指定に加え、人事に関する指示まで刑務所から飛ばしている。

 実刑判決を受けても、主導権を渡す気はさらさらない。中島氏は逮捕後、理事長などの全役職を辞任。後任の理事長に実母の範氏、新学長には元大蔵官僚で、元衆院議員の相沢英之氏がついた。中島氏はこの相沢氏の役割について、獄中から幹部に向けた手紙でこう書いている。

「相沢学長の役割は、学校の『健全な顔』になっていただき、信用回復が目的ですから、元大蔵事務次官、国務大臣の肩書は、日本ではとても信用があるので、高い給料を出している。だから余計なことはしないで、私の言うとおり、他団体に顔を出し、『心配はいりません。ちゃんと教育しています』のメッセージを出すのが仕事。今のところそれが最も大切だ」

 こうした独裁経営のもと、残った幹部はイエスマンばかり。前出の東京福祉大学理事長名の回答書の最後には、こう書かれている。

「中島氏は平成32年10月24日に刑期満了から10年が経過します。刑法第34条の2(刑の消滅)により刑が消滅しますので、創立者である中島氏は教育の現場に復帰させることができるので、そのときは大学を挙げて、本学に直ちに復帰してもらうつもりです。中島氏は現米国大統領のドナルド・トランプ氏のフォーダム大学の同窓生であり、実力のある教育の専門家であり、本学にとって大切な宝です。中島氏が復帰したときには本学の教育を更に充実させて頂けると理事会では認識し期待しています」

 独裁経営の立ち直りのためには、そのトップだけではなく、経営幹部の一新も求められるだろう。(AERA編集部・澤田晃宏)

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