そうやってCHAIの魅力が世界に発信されていると同時に、海外でのライブを数多く経験することで、観客の反応の違いなども通じて彼女たち自身が学んだことは決して小さくないはずだ。

「音楽の楽しみ方の違いを見たかな。リズムだけでノれる国もあれば、メロディーに涙する国もある。人間がたくさんいるというのがいちばん実感できたから、歌詞の面ではそれが一番かな」(ユウキ)

「めちゃ自由だよね。男のお客さん、めちゃくちゃ大声で歌う(笑)。日本語理解していないのに、日本語の歌詞とか歌うの。すごいなと思った」(カナ)

「日本みたいに“ちゃんと音楽聴いてますよ”という感じじゃなくて、リズムにノりたくて動きたくてしょうがないという感じ」(マナ)

「(日本の観客にも)提案したい。こういう音楽の聴き方もあるんだよ、って」(カナ)

「そうだよね。新しい楽しみ方あるよ。気づいたら“こっちの方が楽しい!”ってなるかもしれないし」(ユウキ)

「だけど、海外だから英語で歌うとかじゃなく、同じパフォーマンスを同じクオリティーで続けるというのは考えるよね。アメリカでも日本でも、どこでやってもCHAIはCHAIである。それが一番難しいし、一番意識もしてるところかな」(カナ)

「CHAI知っているけど音楽知らないって人たちも多いと思うから。“なんかピンクの服着てる子たち”という認識の人たちにも、音楽を聞いてもらいたいな、って思ってる」(マナ)

「音楽までたどりついたらくつがえせるから」(ユウキ)

 終盤、インタビューは意外なほど音楽的な話に終始した。いや、それは決して意外じゃない。彼女たちが最初から音楽の力で変えようとしているのは、かわいさにまつわるコンプレックスだけでなく、実は日本の社会の根底に根付く偏見や先入観にもつながるものだ。

 そんなつまらなさに対して彼女たちが音楽でやろうとしているのは、「それ、間違ってるよ!」と決めつけて叫ぶより、「誰だってこんなにかわいいし、楽しいんだよ」と表明できること。パンクのようなピンク。きっとそれが、彼女たちのまとうピンク色に込められている。(ライター・松永良平)

※AERA 2019年3月25日号